桜田 よしたか
自由民主党
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委員会
職務発明訴訟の増加は日本経済に影響をどのような及ぼすのか [2004/04/23]
桜田委員
 自由民主党の櫻田義孝でございます。
 参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中当院のために来ていただきまして、ありがとうございます。心から御礼を申し上げたいと思います。
 さて、今の四方の陳述を聞いていまして、質問するのもなかなか難しいものだなというふうに思いました。ただ、対決法案というようなそういう問題ではないというだけに、労働組合も、使用者も、学術的立場の方々も、ほっとしているところであります。
 特許法三十五条の改正についてはいろいろな意見がございまして、従業員サイドに立ったもの、あるいは企業サイドに立ったもの、あるいは学術的な観点から中立的な立場に立ったもの、いろいろな意見が寄せられて、非常に難しく奥深い問題であるかなということを本当につくづく感じたわけでありますが、一つ言えることは、これにうまく対処できるかどうかということは、我が国経済のソフト化や高付加価値化が実現できるかどうかの帰趨を決定するということで、それだけ我が国経済の将来について重要な課題であるというふうに認識しているところでございます。
 こうした中、大変話題になっております先般の東京地裁におけます青色発光ダイオード訴訟の判決というものには、非常に我々も衝撃を受けているわけでありますが、裁判所は、被告である会社側に、原告請求どおり二百億円の支払いを命じたということであります。前日には、日立製作所の光ディスク技術をめぐる訴訟で、東京高裁で過去最高の一億円を超えるこれまでにない対価が認められたところであり、一日で最高額が二百倍にもなってしまい、職務発明をめぐって、今後この手の訴訟が増大していくのではないかということを懸念するわけであります。また、これは、ほとんどその勢いというものはとめられないのではないかと思います、現在の段階では、このまま野放しにしておいては。
 確かに、我が国経済にとっては、高付加価値な製品を生み出していくことは至上命題であり、そうした富の源泉となる発明者を厚く遇するということは、国家的な課題であると思います。これができないと、どんどん企業内発明家がアメリカに流出してしまう、頭脳流出ということが促進してしまうのではないかというふうな心配もあります。しかし、だからといって、今回のように、企業が絶えずこうした数百億円という巨額の請求を受けることを覚悟するというのは、決して好ましいことではないと考えているところであります。
 発明を製品化するというのは、参考人の方々のお話がありましたように、多くの補助技術者、そして設計者、営業担当、広報、多くの設備投資、こうしたものの条件が整って初めて企業収益を生んでいくものでありまして、発明者のみに巨万の富を帰させるというような考え方については、私は慎重であります。
 よく言われるところに、先ほど御説明もありましたが、企業利益につながるのは一〇%で、残りの九〇%は役に立っていないというデータも報告されるところであり、企業や株主はこうしたリスクをとっているわけであります。一方、職務発明家は、給料をもらいながら海外留学をしたり、社費を使って研究をしているわけであり、この点、純粋な自由発明とは幾分違うのではないだろうかなと思っております。
 よく野球選手のイチローや松井さんと中村教授のような発明家が比較されているところでありますが、彼らが利益をそれだけ受け取るのは、例えばイチローさんや松井さんなんかは、けがをしたりなんかすると、自分でリスクをとって、所得にならないとか商品にならないわけですけれども、やはりそれは、自分自身のコストというものを払って、多くの犠牲の上に立っているということを意味しているのでありまして、こうした下積みで終わるやり方もあるということを一つ我々は理解しなくてはいけないのではないかなというふうに思います。
 しかし、実際、職務発明に関しては、こうしたリスク、つまり成功しなかった場合のコスト、犠牲は企業が全部しょっているわけですから、私は、発明家ヒーロー論のような安易な考えについては疑問を持っているところであります。
 そこで、まず、それぞれの参考人にお伺いしたいんですが、青色発光ダイオード判決を念頭に、今後このような職務発明関連訴訟が増大して、裁判所の判断で巨額の支払い命令が出ていくこと自身が日本経済にとって好ましいかどうかということを、簡単にお話しいただければありがたいと思います。
後藤参考人(東京大学教授)
 職務発明に関する訴訟が増大することは、企業にとっても、従業員にとっても、日本経済にとっても決して望ましいことではないというふうに思っております。
 企業は、今御説明にありましたように、成功した技術開発についてだけ非常に大きな金額を事後的に払うことを命ぜられるかもしれないというリスクを抱えることになりますし、また、裁判所の判決なんかでも計算方法がよくわからないところがありますので、その意味でも非常に大きな不安定要因を抱えるということになります。
 そういう状況だと、研究開発意欲がそがれて、国際競争にも不利になるということも考えられます。それから、研究所の中でも、そういう非常に巨額のお金が飛び交うという話になりますと、なかなかそれをマネジメントしていくことも難しくなるんじゃないかというふうに思っております。
 また、従業員の方にとっても、こういう訴訟がふえるということになりますと、その前提となっておりますが、訴訟を起こさないと適切な報酬が得られないというような状況というのをなくしていかないといけないわけでありまして、その点から考えても、個人にとって訴訟を起こすということは非常に大変なことですから、多くの従業員が、自分の勤める会社までは訴えたくないけれども、今のあり方には不満を持っているというふうな状態で過ごしているのかというふうに考えております。
 ですから、企業と従業員というのが裁判などで対決するということではなくて、必ずしも企業と従業員の関係をゼロサム的に考える必要はないわけでありまして、企業の研究費の五割近くは研究者の人件費でありますから、企業が活発に研究費を使用して研究開発を行っていくということは、研究者のためにもなることでありますし、それを通じて企業の利益が上がるということで、その中から研究費に再投資していって、研究者も報われる、そういう仕組みをつくるということが大事でありまして、そういうことによって職務発明訴訟が増大するという問題に対応していくことが重要ではないかと思っております。
石田参考人 (凸版印刷株式会社会社 専務取締役広報本部長 兼法務本部長)
 ありがとうございます。 私は、結論として、日本経済のために好ましいことかという御質問に対しては、好ましくないというふうに思います。
 企業経営においては、先ほども申しましたように、予見可能性を前提にした経営を行うべきでありますし、やっているわけでして、現在のようなアンバランスな判決が出続けますと、企業経営、ひいては日本経済の発展のために悪影響を大きく持つ、そういうふうに思います。
 なお、詳細な理由につきましては、先生御整理いただいた認識と全く同認識でございます。
 以上でございます。
竹田参考人(弁護士)
 我が国では、現在、知的財産戦略政策が推進されておりますけれども、産業社会の再生のためにも、技術革新を一段と各企業が進めて、技術の開発、改良に努める必要があるというふうに痛感しております。企業は、もう、すぐれた発明の実施によって価値の高い製品を生み出す、そしてより高い収益性を生み出すということが必要ですし、そのためには研究開発部門を充実していかなければならないと思います。
 そのためには、企業が従業者にやはり配慮した合理性のある補償規程を定めていくべきでありまして、ただ、せっかくそういう規程をつくりましても、それに法的拘束力がないということになってしまってはその努力が報われません。また、従業者の側から考えましても、その規程に基づく補償が得られるということになれば、先ほど申しましたように、安心してすぐれた技術開発に努めることになるのではないかと思います。
 御指摘のように、職務発明に係る補償金請求訴訟というのは頻発している状況にありますし、今後もその状況は続くのではないかと思いますけれども、そのような使用者と従業者との間で発明の評価をめぐって紛争が頻発するということは、産業界の発展のためにとりまして決して望ましいことではありません。
 その意味では、現在御審議いただいている改正法案は、国家的施策といたしまして、技術開発を促進して、すぐれた技術を生み出すためにも非常に有益な法案ではないかと考えております。
 なお、最後に一言、日亜化学の問題について触れておきますと、現在控訴中ですし、判決の当否の意見ということは控えさせていただきますが、あの事件自体は、判決の中でも言われているように、極めて特殊な、異例な事件であると裁判長自体が言っていることからも、あのような高額訴訟が今後相次ぐ状況にあるとは思いませんけれども、判決の中でその対価をどうやって計算しているかということを見てみますと、特許期間であります平成二十年までの間に青色発光ダイオードの市場の成長率、被告会社の予想市場占有率、それから予想売上高、つまり平成二十年にどうなるのということについて三つの、推計に推計に推計を重ねているわけですね。
 その意味では、そこが問題だという指摘は当然あると思うんですが、ただ、現在の判例の解釈基準からしますと、裁判所はどうしてもこういう推計手法に頼らなければならないわけでありまして、これが改正法案のように、企業が合理的な補償規程を有して、それが法的拘束力を認められるということになれば、結論として、妥当な対価の算定が可能になっていくのではないかと考えております。
 以上です。
大橋参考人 (日本労働組合総連合会 総合政策局部長)
 労働組合の立場からいたしましても、委員の御質問につきましては、当然望ましいと言えることではございません。先ほどの意見でも申し述べさせていただきましたとおり、研究者側、労働者側の方も、好きこのんで訴訟を起こしているわけではないということがあります。また、その訴訟の労働者側の負担というのはとても大きいというようなことも考えますと、今本当に求められているということは、現在ある労働者側の不満であります評価に対する納得感の低さというものを解消し、できる限り訴訟が起きにくくなるような環境整備を早急に行うことというふうに考えておる次第でございます。
桜田委員
 ありがとうございます。
 四人とも、好ましいことではない、日本経済のためにこういう訴訟が長引いたり頻繁に起こることは好ましくないということで一致を見て、また、この法案が速やかに通ってほしいという意図が感じられたということで、非常に安心感を持っているわけでありますが、今回の改正案の第四項の中身で重要なことは、勤務規則であろうが契約であろうが、会社が社員に対して説明責任をしっかりとするようにということを求めているということは、今までからすると大変前進ではないだろうかなと思っております。企業と従業員が互いに納得できるような形で処理されることが一番望ましいのではないかというふうに思います。
 中村さんの、いろいろなほかの言い分もあるんですけれども、会社をつぶすまでやらないと意味がないというようなことでは、やはり良好な労使関係というものを築けないのではないかなというふうに思っておりますし、訴訟のほとんどが会社をやめてから起こすということも、我々人間社会にとっては非常に悲しいことではないだろうかなというふうに思っております。
 それで、私も感じたのは、中村さんが発明をしたときに、本当かどうかわかりませんけれども、二万円しか渡さなかったとかよく伺っているんですけれども、発明に対する対価が余りにも少な過ぎたのではないか。会社はもう従業員へ給料を払っているんだからそれでいいんじゃないかと、余りにもけちん坊過ぎたのではないかというのが私の率直な考え方で、能力のある人にそれなりの対価、評価というものが、もうちょっと高く見るべきではなかったのかなというような、そんなふうに思います。
 それで、企業と従業員が相互の理解の中で決めていくことで、私は、裁判所が過度な干渉はすべきではないと。先ほど参考人の方からありましたように、裁判の中では多くの特許の例が、何百、何千の特許を利用しながらやっていくんだ、そういう中で一裁判官が、高等裁判所あたりになると三人ぐらいいるんでしょうけれども、地方裁判所だと裁判官は一人の場合も多いですし、果たしてそんなに高度な知識を持っている裁判官が今この日本にどれだけいるんだろうかということになると、私はちょっと疑問があるのではないかなというふうに思います。
 そこで、日本経団連の石田参考人にお伺いしたいのですけれども、このような問題意識に立った企業サイドでも、例えば、三菱化学という会社で最高二億円を超えるような報償金をつくっているというように、企業側としてもさまざまな取り組みがなされているということを聞いておるんですが、企業の問題解決のための取り組みについて、発明者に報いる積極的な取り組みをしている会社が全体としてどのくらいあるんだろうか。また二番目に、報償金額の上限についてはそれぞれどのように定められているんだろうか、こうした取り組みは実際の従業員にどれだけ評価されているんだろうかということをまずお伺いしたいなと思っております。企業の努力が改正案の中でどのように生きてくるのかということについてもお伺いしたいと思います。
石田参考人
 御指摘の点は三点あろうかと思います。
 まず、各企業がこのような職務発明問題についてどのように努力をしているかということにつきましては、今、企業においては人材が大変重要な経営資源でございますし、技術開発なくしてはこれからの国際競争力には勝てませんので、非常に重要でございます。したがいまして、職務発明問題も含めて、企業においては、研究開発、そしてそれを適正に評価するシステムにつきましては、大変努力中でございます。
 そして二番目に、ではしからば、職務発明問題につきまして、相当の対価について上限を定めている会社が実はあります。しかし、いわゆる強行規定であって、相当の対価は企業が独自に定めた規程に基づく結論ではない、裁判所の判断でということで、訴訟の流れになっておりますので、幾つかの企業においては、上限を定めるということにつきまして問題ありという認識のもとに、職務発明規程を改定している会社があると聞いております。 さりとて、これは、予見可能性等々から、今回の特許法三十五条の改正の動向を大きく期待しているということが一般だと思います。上限を外せばそれですべて済むかというようなことにつきましては、企業経営的にはまだ十分整理できておりません。
 そして三つ目は、従業員にどのように評価されているかということでよろしかったでしょうか。――これは、結論として、従来の職務発明規定に基づく相当の対価につきましては、もう企業では出願補償、登録補償、実績補償、実績の段階では今訴訟で争われているような評価基準で企業はやっているわけでございまして、そのことについては、透明性あるいは説明責任、そういう観点から、改正法案のようになることが従業員、研究者にとっても歓迎されるというふうに考えております。デュー・プロセス・オブ・ロー的に適正な手続、これは労働基準法手続も含めてであると思いますけれども、そのようなことで経営も研究者も歓迎されてくると思います。
 要領を得ませんけれども、以上でございます。
桜田委員
 今の従業員からどの程度評価されているかということについて、大変突然であれですけれども、大橋参考人に、労働組合の従業員の方はさまざまな企業の取り組みについてどのような評価をしているか、だんだんいい方向に行っているなとか、まだまだちょっとスピーディーには行っていないなとか、そういうような認識についてちょっとお伺いしたいと思います。
大橋参考人
 やはり現状、改正の審議というものを受けてということもあろうかと思いますが、企業の方でも報償規程の改定というのを順次されているというのも耳には入ってきておるところでございます。
 こういうことにつきましては、やはりその企業で働く従業員の納得感を高めるというような意味では好ましい方向には進んでいるんだなとは思うんですが、それが納得感の低さを解消するレベルに至っているかというと、まだそのレベルというふうな認識は我々としてはしていないということでございます。
桜田委員
 石田参考人、まだまだ納得をしているような状況ではないというお話でありましたので、企業の方としても前向きに、今まで以上に取り組んでいただければありがたいなと思います。
 それから次に、改正法案第五項に関しましてちょっと質問したいのですけれども、これは後藤参考人と竹田参考人にちょっとお伺いしたいのです。
 発明の相当の対価についてお伺いしたいのですが、今回の改正案では、発明が生まれるまでの貢献だけではなく、製品化までのすべての過程や研究の処遇でさまざまな企業側の努力を考慮するよう求めております。発明だけでも算定が難しいのに、営業、広報活動まですべてを含めた場合、対価を算定するのはそれこそ大変困難で、果たして裁判所のような機関に可能なのかどうか。先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、非常に不安であるという意見も一部にはあります。また、算定の範囲を広げたことがかえって裁判所を複雑にしないかという懸念も当然出てくるように思っております。
 私は、今回算定範囲を拡大すること自身は、それぞれの立場に立っても大変意義深いものがあると評価しているところでありますが、一部で聞かれるようなこの懸念について、改正の趣旨を踏まえて後藤参考人、竹田参考人の所見を伺いたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
後藤参考人
 議員がおっしゃりますように、考えるべき要件がふえますと計算プロセスもそれだけ複雑になってくるということがあろうかと思いますので、それは非常に大きな問題かと思っておりますけれども、他方で、研究開発がどういうふうに行われるか、発明が起こってから新製品が市場に出ていくまでにどういうことが、その企業の中の努力が行われているかというようなことを考えますと、やはり今の考慮要件だけでは不十分で、今回の改正法案に書かれているような新たな要件というのはやはりどうしても本質的な問題ですので、考慮することが必要ではないかというふうに考えております。
 改正案が実行された後になりますと、ほとんどの案件はその企業の中で話し合いのプロセスで決まってくるというふうに期待しておりますので、外部の裁判所が計算するということではなくて、当事者であります企業と従業員が話し合って計算するということですから、いろいろな要件を考えることも外部の裁判所よりは易しいのではないかというふうに思っております。
 裁判になってしまった場合には、そういう件数が減ることを期待しておるわけですけれども、なった場合には、やはり考慮すべき要件はきちんと考慮するということが必要ではないかというふうに考えております。
竹田参考人
 まず、現在の法律の三十五条の四項について申し上げますと、これは先ほど申しましたように、裁判所の考え方は、この規定が強行規定、これは強行規定であることはほぼ通説、判例だと思いますが、強行規定であるということを理由に裁判所が相当の対価を決めるということで決めていくので、その場合に、最終的には企業の貢献度がどのくらいになるかということが額の多寡を決めることになるということだと思います。
 今までずっと、長い間この制度が運用されてきた中で、裁判所の判決を集計して、ある方が調べたところによりますと、最高で六五%、最小で五%が発明者の貢献度、その逆が企業の貢献度というふうな統計が出ております。日亜事件は五〇パー、五〇パーと見たわけです。ただ、利益の額が巨額であったためにああいうふうな大きな金額になったわけです。
 その場合、じゃ、企業の貢献度でどういうことを見ていくかということが非常に大きなファクターになってきまして、そのために、使用者側としては貢献度を立証するために、特にもう特許期間が切れた発明も含まれていますから、かなり、二十年、二十数年前の研究開発の状況等を逐一調べて証拠を出さなければならないという点で大変な苦労がありますし、それに発明における使用者側の貢献度ということを考えれば、それはやはり発明後に、先ほど申しましたような企業側の営業努力の問題もあれば、また発明者個人に対する昇格、昇級等の待遇の面等もありまして、その要素というのは非常に膨大な要素が考えられると思います。
 現在の実務は、それらを総合して、これらの諸般の事情をしんしゃくすれば企業の貢献度は何%であるという形で判断しているわけですが、裁判官の資質からいってそれができるかと言われますと、四十年裁判官をやっていた私としては内心じくじたるものがありますけれども、ただ、裁判官はやはり精いっぱい自分の知識経験に基づいて判断していきます。ただ、裁判には時的限界と物的限界とございまして、時間的に限られた時間で、かつ、当事者主義ですから、当事者が出した証拠で判断しなければならないという限界がありますので、その中で判断していくのには、精いっぱい自分の良心に従って証拠を客観的に評価して判断していると思いますので、その点はぜひとも御理解いただきたいと思います。
 その上で、現行法ではすべてがそこに集約されたんですけれども、今度の改正法案になりますと、原則的には四項で、契約あるいは補償規程が合理性があるものであればもうそれでいくことになりますので、五項が機能してその判断が必要になってくるのは契約がない場合とその規程が不合理であると認められる場合になりますので、適用の範囲はかなり狭くなってくるから、現行法のような大きな意味は五項自体が持たなくなってくる。その点でもこの改正法案の方がすぐれていると私は思いますけれども、それはやはり範囲はできるだけ広く見る必要はあろうかと思います。そうしませんと、企業活動というのが、やはりトータルで見てその中の発明というのを位置づけなければなりませんので、そういう意味では、現在の五項のような案の方があり方としてはすぐれているのではないかと私は思っております。
 以上です。
桜田委員
 次に、ここで私は、職務発明をめぐっての専門的な紛争処理調停機関の是非についてちょっとお伺いしたいなと思っておるのです。
 今、竹田参考人のお話がありましたように、裁判所のことは大変はっきり言うと言いにくいような立場かもしれませんけれども、私は、やはりこういう専門的なものは、対価の算定で、判例でもあいまいさが残っておりますし、どうも関係者を納得させていないということが指摘をされているやに私自身も聞いておるのです。
 特許の利益への貢献度、発明者の貢献度、営業、広報、それらの貢献度についてやはり一定のガイドラインを、聞くところによると、訴訟を未然に防ぐという意味からドイツなんかには算定方法を定めたガイドラインがあるということを聞いておるのですけれども、その辺がうまくいっているのかどうか私は詳しくは存じませんが、特許庁の下にそういう紛争を未然に防ぐような調停機関を設置することについてはいかがだろうかというふうに私は思うんです。
 発明する人が裁判にエネルギーを使うようなことではなくて、未然に防いで研究に没頭してもらうというようなところで、私はそういった方法もあるのではないかなというふうに思うんですけれども、これはどういう所見を持っていられるか、ちょっと後藤参考人にお伺いしたいんです。
後藤参考人
 まず最初に申し上げたいのは、今回の改正案でねらっていますのは、企業と従業員がよく話し合って、透明で公正なルールをつくって、そういうプロセスを必ず経てくださいということで、その結果として両者の、従業員の納得感が増すということを期待していまして、それによって裁判や調停を必要とするケースというのは減ってくるのではないかというふうに期待しておるわけでございます。企業の中にも不満を述べたり対応するという仕組みができますし、また、特許庁が事例集を作成するということで、このプロセスがうまくいくように手だてを講じるということも考えられているようであります。
 どうしても内部で解決できない場合には、議員おっしゃるように、企業機密にかかわることも多いですし、また公的なリソースにも限りがあることでありますので、特許庁や裁判所ではなくて調停というものが利用されることもあり得るのではないかというふうに思っています。
 既存の仲裁機関というものがありますし、既に仲裁センターというところで職務発明の対価について調停や仲裁を行っていると聞いておりますので、そういうところの利用ということもあり得ると考えております。
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