桜田 よしたか
自由民主党
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広報誌「絆」
3号 金融再生関連法案を巡る与野党協議をみて
 ―― 果たして 多数者の意見は生かされたのか?――

(早期健全化スキームに反対し続ける野党各党の経済常識のなさ)

先般、ようやく金融システム再生関連8法案が国会を可決、成立致しました。また、これ以上の景気低迷に歯止めをかける意味からも最大の懸案であった、破綻前金融機関への資本注入を前提とする早期健全化スキームも具体化する方向であります。

しかし、この間のグズグズした与野党協議に、国民の皆さんは、「もうウンザリだ」というのが正直なところではないでしょうか。

金融再生関連法案に関わる一連の動きを通じてはっきりいえることは、野党各党、特に「民主党」や「自由党」には政策責任能力が全く欠けているということであります。民主党は、依然金融機関に対する資本注入の必要性に反対し続けておりますが、景気のこれ以上の悪化を防ぐためにも、日本発の世界経済恐慌を防ぐためにも、金融機関に対する資本注入は絶対必要な政策なのです。

資本注入反対に固執し続ける野党の皆さんには、金融機関の貸し渋り→信用収縮→景気の更なる悪化という、政策当事者が誰でも持つべきはずの経済常識が全くありません。誠に驚く限りであります。単に、高給取りの金融機関憎し、自由民主党憎しの薄っぺらな議論のみが横行しており、いわば極端な感情論に陥っているのが実情であります。

そして、何より一番問題であるのは今の金融システム再生議論を直接政局に結びつけようというその醜い発想・魂胆であります。昭和初期、政争が原因になった金融恐慌の学習効果が全くありません。

(現実性を欠く野党案「銀行国有化」問題)

金融再生関連法案成立に関わる与野党協議の中で野党が最後まで固執した争点に、(1)問題銀行の国有化による特別公的管理(長銀にもこれを適用予定)、(2)金融再生委員会の設置がありました。

まず、特別公的管理と呼ばれる銀行の国有化方式は、財産権の侵害という憲法上の観点から大変問題があります。また、経営方針から役員の選任まで国が直接どうやって面倒をみるのか、そうした方式をとって本当に破綻処理がスムーズにいくのか、多くの問題が残されております。

国有化という発想自体、戦前の「国家総動員法」と同じであり、危機的状況にある金融業界ををますます追い込み、再建そのものを尻込みさせてしまうことになるのではないでしょうか。

最終的に破綻処理に関しては、国有化のみではなく、わが党が当初から主張してきた、優良債権を他の民間金融機関に引き継ぐまでの受け皿銀行を設立する、いわゆるブリッジバンク方式も盛り込まれることとなったため、何とか救われました。今後、野党案を軸にした「銀行の国有化」が現実的に意味をもつ対策として機能するかどうかは大いに疑問といわざるを得ません。

(迅速性を損なう恐れのある野党案「三条委員会方式」)

また、野党が同じく固執してきた金融再生委員会については、どうでしょうか。今回、再生委員会で採られている国家行政組織法上の「三条委員会」と呼ばれる組織方式は、職務の性質上、政府からの独立性が高い、複数委員による合議制をとった方が良いような行政機関に採用される組織形態であります。皆さんは、「金融問題を担当する行政機関は政府からの独立性が高い方が良いのではないか」という意見をお持ちになるかもしれませんが、厳密には、これは正しい理解とはいえません。

大蔵省の銀行局やら証券局やらが悪いことばかりしていたのでそうお感じになられたとしても無理はありません。しかし、実は金融再生関連政策というのは如何に迅速にリーダーシップをもって適切な再生・破綻処置を行っていけるかが鍵であり、正にそれこそが、最終的な国民負担の程度に直結するというものなのです。

公正や原理原則論を基調とするため敢えて三条委員会方式が採用されている、例えば「公正取引委員会」や「国家公安委員会」、「公害等調整委員会」のような性質のものとは相容れない異質なものなのであります。委員会のお歴々がああでもない、こうでもないとダラダラ議論している間に、肝心の金融機関が社会に大混乱を与えるかたちで破綻してしまっては元も子もありません。今回の長銀の末路が良い例でしょう。

(混迷深まる政局運営と政策責任の重さ)

いずれにせよ、このような野党案をかなり取り入れざるを得なかった自民党の政策運営には大変な問題があり、わたくしたちは猛省しなければなりません。具体的には長銀処理を急ぐあまり、はじめから野党に擦り寄っていった姿勢は今後あってはならないことです。

野党のグスグズした対応に付き合っている間に、長銀の株価はみるみる下落し、最終的には破綻に近いかたちとなってしまいました。

インパクトだけを狙った情報を垂れ流しにするマスメディアや経済政策感覚のない民主党を中心とする野党、そして、主体性のない自由民主党の政策運営が一緒になって、長銀処理の失敗も含め、景気を更なる低迷に追いやったといえるかもしれません。本来、「金融安定化国会」であるはずが、「金融不安定化国会」になってしまったのであります。

民主党の菅さんなどは一体、この点をどう考え、どう責任をとるつもりなのでしょうか。日本経済と金融機関の屍(しかばね)を踏み台にして自分の名を上げられるとでも思っているのでしょうか。国家の経済運営の根本が問われている時に、自分の政党の利益を優先して、一体何が「民主党」だというのでしょうか。

今後、わたくしたちは、参議院における過半数を獲得できない間は、このような不毛な与野党協議を繰り返すことになるのです。その度に現実性に欠き、国民を感情論的に扇動することばかり考えている野党に引っ張られていたのではたまったものではありません。かといって、すぐ衆院解散をすれば政治的空白をつくり、日本発の世界経済恐慌を発生させてしまうことは避けられないのが現実です。また、仮に解散してわが党が衆議院で過半数の議席を獲得したとしても、参議院における議席が増加するわけではないので何ら解決にはなりません。

とにかく、わたくしは、一日でも早くわが国の金融システムを安定させ、景気回復に全力を注いで参る覚悟でございます。

国民のみなさんにおかれましては、面白おかしいだけのテレビの報道から一歩下がって今一度冷静になり、わが党の主張と野党の主張とどちらが正しいのか、景気を浮揚させる意味でどちらに説得力があるのか、現実的な政策責任者としてどちらがふさわしいのかじっくり考えてみていただきたいと思います。それが偽らざる今のわたくしの願いであります。

銀行破綻とデフレスパイラル

連続的な大型金融機関の破綻
預金引き降ろし 金融システム不安の増大デリバティブ等を通じ海外へ混乱が波及
融資能力の低下 企業の経営難・給与所得の減少
世界経済デフレ
輸出の減少
消費・設備投資・住宅投資等の大幅な減少
株価の暴落と更なる企業マインドの悪化
金融機関による貸し渋りの更なる強化
連鎖倒産・失業率の激増、経済恐慌(デフレスパイラル)へ




(金融再生問題を巡るQ&A)

Q1.「ブリッジバンク」って何ですか?

A1.ブリッジバンクというのは、「受け皿銀行」とも訳されますが、要するに破綻金融機関からお金を借りていた人や企業が困らないように、優良な債権を新たな金融機関に円滑に引き継がれるようにする「つなぎ銀行」のことです。今回の金融再生法では預金保険機構がこれを設立できることとしました。

Q2.財政・金融の分離問題にはどういう意味があるのですか?

A2.今まで大蔵省は、予算を扱う財政や税制、金融機関行政などの絶大な権力をもっていました。しかし、こうした権力集中が弊害になり、大蔵省と金融機関の持たれ合い構造をもたらしたほか、金融行政が財政的要因に左右される危険性があることなどから、大蔵省から金融行政を分離し、透明性と緊張感のある行政機関に任せようというが財政金融の分離構想です。今回の与野党合意では、2000年に現在の金融監督庁に金融行政に関わる企画・立案機能もプラスした「金融庁」として独立させることで合意されました。

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