桜田 よしたか
自由民主党
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広報誌「絆」
6号 平成11年度予算案について

(景気の現状と経済政策のあり方)

現在、わが国の景気は極めて悪い状況にあります。需要の最大項目であります個人消費(GDP<国内総生産>の約60%)については、一般家庭が先行き不透明感から、財布のひもを緩めておらず、各種小売店の売上高をみても、前年比マイナスが続いております。また、景気の原動力となるはずの民間設備投資(GDPの約15%)については、需要減少、先行き不透明感の高まりから、特に中小企業の減少が著しく、大企業についても製造業を中心として減少傾向にあります。住宅投資(GDPの約5%)については、マンション向けの不振から低調。頼みの海外輸出(GDPの約3%)についても、アジア・欧米向けの不振から、総じて伸び悩みの状況にあります。

こうした需要面での動きを受けて、企業収益は更に悪化、生産面でも低水準であり、雇用面ではついに戦後最悪の4.4%の失業率に達しました。まさに日本経済は、八方ふさがりの状況といっても決して過言ではありません。

わたくしたちは、こうした景気情勢を打開するため、ありとあらゆる策を講ずるべきであります。いうまでもなく、ここでは政府の積極的な予算編成こそが「鍵」であります。バブル以降、これまでの数次に亘る景気対策が打ち出されて参りましたが、どれも景気の下支えにこそなれ、本格的に景気を浮揚させる契機とはなりませんでした。残ったのは今や国だけで330兆円にも達しようという巨額の借金だけでした。

要するに、その場、その場で、経済界や政治家や大蔵官僚がそれぞれメンツをたてられる範囲での妥協点を第一として調整されてしまったため、本当にその時の景気回復に必要なボリュームや、発動のタイミングといったことに関する十分な検討・判断がおざなりにされてしまったことがすべての失敗の原因であります。

この点、政治家や行政官僚は、もっともっと景気・実態経済の動きといったことを知らなければなりません。わたくしなどの私見ですが、主な経済閣僚や公務員、高い給料をもらっている日銀総裁などは、経済成長率、インフレ率等主な経済指標を明確な目標値として、これを一定期間内に達成・実現できなければ、自己の給料・ボーナスを一部返上したり、引責辞任したりすべきであります。

企業経営などをやっていれば、当たり前のことでありますが、結果について経営者は責任をとらなければならない、だからこそ皆一生懸命になって働き、努力すれば業績も上がっていくのです。

今の公的機関の多くは、公共目的という言葉を自己保身のために利用しているだけであり、担当役職もドンドン変わってしまうものだから、結果が出た肝心の時には、「担当者は、もう変わりましたので…」で、済まされてしまうのであります。今こそ、経済政策に関わる職務権限と政策結果についての責任関係を明確にすることによって、政策関係者の緊張感を一気に増大させることが肝要であります。


(平成11年度予算の大要について)

さて、話が幾分脱線しましたが、先ほど申し述べてきましたような、「できるべきことはすべてやる」という危機意識に基づきまして、わたくしたち自由民主党は、現在、全力で景気対策に取組んでおります。

そして、景気回復に向けたわたくしたちの強い意志の現れが今回の平成11年度予算であると考えていただければと存じます。このたびの平成11年度予算は、平成十年度第三次補正予算と一体的にとらえ、年度末から年度始めにかけて切れ目なく施策を実施すべく、いわゆる15か月予算の考え方の下、景気回復に全力を尽くすという観点にたって策定したものであります。

今回の「絆」では、皆様に平成11年度の予算の大要と今後の各分野における政策的ポイント等についてお話申し上げたいと存じます。

まず、歳出面については、政策経費である一般歳出の規模は、46兆8,878億円となり、前年度当初予算に対して+5.3%のプラスとなっております。これを受け、一般会計予算規模は81兆8,601億円、前年度当初予算に対して+5.4%の増加となっております。

こうした積極的財政運営を可能とするため、公債発行額は、31兆500億円、公債依存度も37.9%に達しております。当初実績過去最高が第2次オイルショック時の昭和54年度の34.7%でありますから、これは大変な数字であると申せます。今後の財政再建の道のりを想像するとわたくし自身、財政構造改革推進委員会に属していたこともあり、複雑な思いはありますが、要は、今にも沈没しかかっている船の船長室の金庫に「いくら現金があるのか」を議論しても意味がないのであります。

万難を排して、ここは何としても「日本号」の沈没を回避しなければならないのであります。

(1)社会保障関係費について

まず、社会保障についてでありますが、少子・高齢化が進行する中で、国民の間には老後の生活に対する不安が広がっております。21世紀に向けて、若者も高齢者も安心して、生き甲斐に満ち溢れた活気ある生活を日々送れるような公的支援体制を確立しなければなりません。

これは単に社会保障費を増やしていくということを意味するものではなく、例えば、高齢者の雇用・就業を促進したり、高齢者が活動しやすい生活環境を整備したりというように、社会の仕組みや人々の意識を、替えていくような働きかけをすることが重要であるといえます。

また、社会の仕組み全体を見直す中で、年金制度や介護保険制度、医療等についても、将来にわたって安定的に運営できるよう、給付と負担の均衡や、民間事業者の参入といった視点から、効率化・合理化を実現するための構造改革を強力に推進していかなければなりません。

今回の予算の中では、新ゴールドプランに基づく在宅サービス基盤の整備を着実に推進するほか、児童家庭対策や障害者プラン関係、社会福祉施設運営費等について軒並み増額致しております。

<社会保障関係費> (単位:億円)
事 項 前年度 11年度 伸び率 構成比
1.生活保護費 11,106 11,524 + 3.8 7.2%
2.社会福祉費 42,578 45,805 + 7.6 28.4%
3.社会保険費 86,118 94,910 +10.2 59.0%
4.保健衛生対策費 5,359 5,273 ▲ 1.6 3.3%
5.失業対策費 3,269 3,438 + 5.2 2.1%
合計 148,431 160,950 + 8.4 100.0%


(2)文教および科学技術振興費について

次に文教についてですが、わたくしは、わが国が、21世紀に向けて伝統、歴史、文化、価値観を大切にする魅力的な国家となるためには、教育こそ基本であると考えております。具体的には、まず、「公民教育の充実」が最優先課題であります。

初等中等教育の現場において、ボランティアを行うことで社会と直接関わったり、介護保険の体験学習を行うことなどにより、社会の一員を構成する市民、公民としての自覚・常識を身につけさせることが、公教育にとって、一番重要であると確信する次第であります。学科知識などはその次の話であります。

また、よくいわれる「心の教育」というのは、わたくしの解釈としては、「家庭・家族の復権」のための教育であります。今の、教育現場荒廃の原因の多くはわたくしたち親にあります。今後、学校が家庭と密に連携を取りながら青少年の精神面の発育を適切にフォローしていく必要があることはいうまでもありませんが、最終的な拠り所としての「家庭」そのものの充実が不可欠であります。こうした視点から、公教育が、一体何ができるのか、今一度考えてみる必要がありそうです。

平成11年度文教予算において、わが党は、高等教育・学術研究の充実や、養護学校教育費、育英事業費の増額を実現しており、各分野に配慮したバランスある配分内容と致しております。

次に、科学技術費用については、創造性と活気あふれる国家建設のため、特にわが国が苦手とする基礎研究の育成という視点から、格別の対応が必要であると考えます。今回は、科学研究補助金を前年度比100億円増額したほか、戦略的基礎研究推進事業費、未来開拓学術研究推進事業費等、軒並み前年増とする手厚い内容を実現致しております。


<文教および科学技術振興費> (単位:億円)

事 項 前年度 11年度 伸び率 構成比
1.義務教育費国庫負担金 28,876 29,030 + 0.5 44.8%
2.国立学校特別会計へ繰入 15,335 15,537 + 1.3 24.0%
3.科学技術振興費 8,907 9,630 + 8.1 14.9%
4.文教施設費 1,875 1,780 ▲ 5.1 2.8%
5.教育振興助成費 7,400 7,582 + 0.1 11.7%
6.育英事業費 1,064 1,172 + 10.2 1.8%
合計 63,457 64,731 + 2.0 100.0%


(3)公共事業関係費について

公共事業関係費に関しましては、景気回復をすべてに優先させるという考え方の下、前年度当初比5.0%増額するとともに、予備費を5,000億円計上することとなっております。内容的には、@物流効率化による経済構造改革に資する分野、A21世紀を展望した経済発展基盤となる分野、B生活関連社会資本への重点化を図っております。

最近、公共事業悪玉論が盛んなようですが、わたくしは、これは、根拠なき誤解に基づいた間違いであると考えます。

わが国の混雑した都市部の道路をみても、不十分な公共下水道をみても、緑化公園整備をみても、人々が心地よさを実感できる豊かな社会の実現のためには、まだまだ公共事業は欠かすことはできない存在であるといえます。また、景気対策という意味からも、実際、昨年度財改法を成立させる前までは、紛れもなく公共投資こそがわが国景気を下支えしてきたのであります。今こそ、わが国の景気の潜在力を引き出すような思い切った公共投資を、政治のリーダーシップのもとにダイナミックに打ち出していくべきなのであります。

今回の予算についてみますと、公共事業費全体の3割を占める道路整備事業について高い水準を維持しているほか、治山治水対策事業費について+5.2%の増加、今後、力を入れていくべき住宅市街地対策事業費等についても+6.4%増を確保致しているなど、都市型インフラ拡充に重点をおいた内容を実現しております。


<公共事業関係費> (単位:億円)

事 項 前年度 11年度 伸び率 構成比
1.治山治水対策事業費 13,992 14,723 + 5.2 15.6%
2.道路整備事業費 26,843 27,025 + 0.7 28.7%
3.港湾漁港空港整備事業費 6,799 7,047 + 3.6 7.5%
4.住宅市街地対策事業費 10,683 11,366 + 6.4 12.0%
5.下水道環境衛生等整備費 16,284 16,670 + 2.4 17.7%
6.育英事業費 10,837 10,909 + 0.7 11.6%
7.育英事業費 3,399 3,509 + 3.2 3.7%
8.育英事業費 340 2,380 +601.0 2.5%
9.育英事業費 677 677 + 0.0 0.7%
合計 89,853 94,307 + 5.0 100.0%


(3)その他諸経費について

その他の経費についてみますと、まず、防衛関係費でありますが、効率的で節度ある防衛力整備を主眼とし、前年比微減の4兆9,322億円となっております。

昨年発覚した防衛装備品調達に関する一連の不祥事については、防衛当局幹部は猛省しなければなりません。先の一件で、国民の防衛庁に対する信認は一気に失墜したことは明らかです。北朝鮮情勢が怪しい雲行きになってきたこの今であるだけに、防衛庁の罪は重大であります。

今後、わたくしと致しましては、防衛当局者の綱紀粛正と防衛政策関連支出のより一層の透明化・効率化・合理化のため、全力で改革に取り組みたいと考えております。

次に、経済協力費については、前年度当初比+0.8%と、厳しい中でも手堅く確保致しました。同経費については、「今は海外援助どころではなく、まずは景気回復のため国内公共支出を最優先にすべきである」という当然の議論がありますが、一方で海外経済協力は現在の輸出の低迷を打開するためという、景気対策からの意味もあり、前年並みを確保した次第であります。

また、中小企業対策も忘れてはならない重要な政策課題であります。そもそもわが国法人企業の9割は資本金1億円以下の中小企業なのであります。日々緊張感と活気に満ちた小回りの効く、これらの中小企業こそが日本経済の繁栄を築き上げてきたのであります。11年度の予算でも、金融対策、新規開業・雇用創出支援等に重点を置いて、+3.5%増の1,923億円あまりを確保できております。

なお、地方財政に関しましては、わたくしは、地域の自主性が生かされるようなかたちでの地方分権をより一層推し進めるべであると考えております。具体的には、主体的で効率的な地方行政を実現すべく、市町村合併を含む体制整備と各自治体の徹底的なる行財政改革に関する的確なる指導を行って参りたいと存じます。


<その他の主な経費> (単位:億円)

事 項 前年度 11年度 伸び率
防衛関係費 49,397 49,322 ▲ 0.2
経済協力費 9,803 9,877 + 0.8
中小企業対策費 1,858 1,923 + 3.5
エネルギー対策費 6,682 6,531 ▲ 2.3
主要食糧関係費 2,691 2,687 ▲ 0.1
産業投資特別会計へ繰り入れ 1,595 1,595 + 0.0
公共事業等予備費 5,000
予備費 3,500 3,500 + 0.0
国債費 172,628 198,319 +14.9
恩給関係費 15,310 14,783 ▲ 3.4
地方交付税交付金 158,702 128,831 ▲18.8
地方特例交付金 6,399



(平成11年度税制改正について)

さて、国の予算の歳出面について、一通りご説明を申し上げましたが、今回の総額で9兆4,000億円にも達する大型減税についても、お話しなければなりません。わが党では、このたび、景気回復への道のりを確かなものとするために、小渕内閣の公約でもありました大型減税の実施を決定致しております。

まず、個人所得税については、最高税率の引き下げ(65%→50%)を行うとともに、定率減税(一率20%、上限25万円)を実施、また、子育て・教育減税として扶養控除額の加算(16歳未満扶養親族控除額 38万円→48万円、16歳以上23歳未満扶養親族58万円→63万円)を行うことと致しました。

法人税につきましては、わが国企業が国際社会の熾烈な競争に充分対抗できるよう、基本税率の引き下げ(実効税率46.36%→40.87%)を行うとともに、中小法人等に対する軽減税率についても引き下げを行うことと致しております。

また、景気回復に資するため、住宅ローン減税を実施するほか、情報通信機器の即時償却制度の創設、さらには、有価証券取引税の廃止等、金融経済情勢の変化に対応して、それぞれ適切な措置を講ずることと致しております。

しかしながら、わたくしと致しましては、更なる恒久減税の実現等、まだまだわが国の税制について取組むべき課題は残されていると認識しております。今後ともわが国の経済構造改革に相応しい税体系の構築に向け全身全霊で取組んで参る覚悟であります。


<平成11年度減税規模一覧表>

具体的な減税項目 減税額
個人所得税減税 4兆円
法人課税減税 2兆5,000億円
子育て・教育減税 3,000億円
住宅ローン減税 1兆2,000億円
設備投資減税 4,000億円
中小企業対策(事業継承) 1,000億円
有価証券取引税などの廃止 2,000億円
地方税の政策減税等 3,000億円
その他 3,000億円



(生活空間倍増戦略プランの推進について)

さて、平成11年度予算案の歳出および歳入全般をみて参りましたが、最後に、わたくしたちの地元に関連し、現在、わたくしが国の予算投入を検討している案件について、少しお話致したいと存じます。

小渕総理が、経済対策の一環として先般打ち出した政策のひとつに、生活空間倍増プランがあります。これは、国民がゆとりとうるおいのある活動ができるよう、生活の質的向上を図り将来への夢の実現を目指していくという考え方に基づき、質の高い居住スペース、ビジネススペース、レクリエーションスペースなどの拡大のため、向こう5年間を視野において、国が積極的投資を行うというものであります。

そして、この一環として、具体的に国土庁が窓口となり、複数の市町村が広域的な連携の下、全国400ヵ所、平均投資額100億円、総額4兆円(5年間通算)の規模で、地域戦略プランを策定する方向が固まっております。

わたくしは、地元の柏市、我孫子市、沼南町が一体となって、このプランを生かして推進できるとすれば、長年の懸案である手賀沼浄化対策しかないと考えております。手賀沼に溜まったヘドロを全部除去することによって、一気に手賀沼周辺まで含めた地域整備事業を行う構想であります。そこでは、遊覧船が周回し、水辺では人々が釣りをしたり、水浴びをしたり、近くの農業ゾーンでは体験農業を行ったりと、充実した空間が展開することになります。わたくしは、是非今年はこの夢にかけてみたいと考えております。

実現に関しては、依然、(1)国と地方の財源分担についてどう考えるか、(2)ヘドロをどのように処分できるか(再利用可能か)といった課題・問題がありますが、引き続き関係機関とも充分検討を重ね、実現に向けて取組んで参る覚悟でありますので、皆様方におかれましてもご支援・ご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。

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