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| 24号 日銀は果たしてゼロ金利政策を維持すべきか? |
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1)ゼロ金利政策とは一体何だろう?
このたび、7/17日の政策委員会の決議で、日銀はゼロ金利政策解除を見送りました。翌日の大蔵委員会において、理事としてわたくしも日銀総裁からゼロ金利解除見送りに至った政策決定に関する報告を受けました。そこで、今回わたくしは国民的関心が大変高いこの日銀によるゼロ金利政策是非論を皆様方とともに考えてみたいと思います。
そもそも、世論を賑わしている「ゼロ金利」とは一体何でしょうか?「ゼロ金利、ゼロ金利って一体何だ。わが社の借入金利は全然ゼロじゃないぞ!」という社長さんとか、「今の銀行定期の金利が限りなくゼロに近いってことかしら?」という奥さんなど、一般的にゼロ金利といわれてもなかなかよくわからない方々が大勢いらっしゃることと存じます。
この場合のゼロ金利とは、短期金融市場において、日本銀行が金融機関に対して政策的に貸し出す際の金利をゼロ%近くまで低下させることを指しています。日本銀行は、金融政策の運営にあたっては、銀行間の金融取引市場における金利のうちもっとも期間の短い、すなわち、無担保オーバーナイト物(1日だけ借りる資金)を日々の金融調節の操作目標としています。日銀は、この無担保オーバーナイト金利を資金供給の度合いによって日々上げ下げすることで、銀行の資金調達コストを変化させ、その変化を通じて、企業や家計の投資や消費活動等一般経済社会に影響を与え、景気を調整することができるのであります。
日銀がゼロ金利政策を決定した平成11年2月当時、既にこの金利は、0.25%まで低下していましたが、経済情勢悪化の中で追加的な金融緩和を行うため、更に金利下限を取り払ってしまうかたちで、残る金利低下余地を最大限活用しようという結論に至ったのであります。市場の様子を見ながら徐々に金利低下へ誘導していった結果、11年4月以降、無担保オーバーナイト金利は、取引手数料を除けば、ゼロ%水準まで低下、その後は安定的に推移してきております。
2)いつまで続く超低金利政策!
ゼロ金利政策をはじめとして、公定歩合0.25%等、日本銀行による現在の「超低金利政策」は一体いつまで続くのでしょうか?それは、わが国景気の情勢に密接に関わっています。日本銀行が、今現在、金利を低く据え置いているのは、「日本の景気がまだまだ安心できない状況にある」と認識しているからであります。彼らはそれを個人消費や設備投資、住宅投資、輸出、生産動向等、あらゆる経済指標から読み取っています。皆さんおなじみの日銀短観もこうした政策判断のためのとても重要な調査資料であります。
今のように金利が低ければ、まず、金融機関から借入れをしている企業が助かります。そして、金利が低ければ採算が合いそうなので今まで止めていた設備投資をしようという社長さんもいるかもしれません。企業が助かるということは、そこに勤めているサラリーマンのお給料も救われるということであり、これは個人消費にプラスであります。「金利が低い今がチャンス」とばかり住宅購入を考え始める方々も多くなるでしょう。更に、低い金利は、多くの貯蓄を株式市場へと回し、これが景気を引き上げることにもなります。
しかし、金利が低いということは年金生活者のように預金金利に頼って生活するという方々にとっては誠につらいものであります。確かに、現役の我々でもさえ、銀行の定期預金のほとんどシミのような金利をみるたびにある種の当惑を覚え、ため息が出ます。
では、日銀はそこのところをどう判断しているのか?結局日本経済全体をみることになります。わが国の場合、家計所得のうち金利等から得られる所得は全体の5%であるのに対し、約80%は企業に勤めることによって受け取る給料等(雇用者所得)が占めています。つまり、日本経済全体からすれば、企業負担軽減=雇用者所得支援という、低金利による家計所得へのプラスの方が大きいという判断になり、「当面低金利政策を続けよう」ということになるのであります。今の日銀の政策判断は簡単にいえば、こういうことであります
3)金利政策はどこで決めているのか?
――新日銀法と政策委員会――
低金利政策をどこで決めているかといいますと、日本銀行の政策委員会というところで決めています。メンバーは全部で8人、お馴染みの速水総裁と2人の副総裁(1人が職員出身、もう一人は日銀お抱えのジャーナリスト)、その他6人の民間出身の審議委員からなっています。わたくしが先の任期中に法案審議に関わった新日銀法により、大蔵省や政治的圧力に影響を受けない高度の政治的独立性を有する組織として、官僚OBばかりであった政策委員会を学者やエコノミスト中心のものへと改革し、また、政策委員会の多数決により日銀の意思決定をすることも明確にされたのであります。議事録も公開され、国会への報告義務も課せられるなど、日銀法改正は確かに大きな前進でありました。
しかし、メンバー等をみる限りまだ不満は残ります。まず、本当にマーケットを知っている人間がどれくらいいるかという点であります。市場というのは時として気まぐれですが、マーケットとうまく対話することが中央銀行には何より求められています。
こうした観点からすると、金融市場の中で損得の恐ろしさを味わってきた金融のプロを審議委員に迎えるべきでありますが、現在では、大企業トップ、某有名銀行の調査部長出身とか大学教授といった面々であり、真の意味で金融市場を体感してきた委員がいないようにも思われます。お堅いところですから、いろいろとあるのでしょうが、金融政策を預かる以上、グローバリゼーションのうねりの中で動じないマーケットのプロのような人物を審議委員として迎える柔軟性も必要であります。
4)今回の日銀のゼロ金利政策解除見送り劇をめぐって
さて、基礎的用語についていろいろ説明してきたところで、ここでいよいよ本題に入りましょう。日銀がゼロ金利政策を継続すべきか否かという問題であります。冒頭で述べましたが、先般の7月17日、18日と大蔵委員会では集中審議が行われ、そごうの問題と、正にこの日銀のゼロ金利の問題が話し合われました。この二つの問題、別々の問題として審議されましたが、日銀の今回のゼロ金利維持という政策判断にはそごう問題が密接に関わっていたことはいうまでもありません。
経緯を簡単にお話しすればこういうことです。そもそも7月17日に日銀では、先にお話しした政策委員会会合で平成11年4月から続けてきたゼロ金利政策を解除することを決定しかけておりました。なぜならそれまでゼロ金利解除に慎重であった委員も含め政策委員会のほぼ全員が景気の下振れリスクは薄らいだという見方で一致していたからであります。
ところが降って湧いたような一連のそごうの倒産劇により、株式市場は全面安の展開となり、政財界、果ては海外からも、「景気がしっかりするまではゼロ金利を継続すべき」という意見があっという間に日銀を包囲しました。そして、日銀は最終的にゼロ金利政策解除を見送る=ゼロ金利政策を維持することを決定したのであります。
日銀では、「あくまで全体から独自に判断した」と主張していますが、こうした世論の勢いに影響を受けたことは間違いありません。日銀は政治の言いなりなったとみられることを極度に嫌いますから、今後も独自の判断ということを強調し続けるでありましょう。
5)いよいよ待たれるゼロ金利政策解除の時期!
さて、今回はそごうの問題等いろいろあって、ゼロ金利解除を見送りましたが、それでは具体的にはこの日銀の政策どこまで続ければ良いのでありましょうか?確かに金融機関の負担を少なくすることは、借り手である企業支援という意味もあって経済政策的には重要であり、それは今までご説明してきたとおりであります。しかし、このような超低金利政策は、公定歩合が0.5%になった1995年9月以来、もう5年近くも続いております。その間に確かに不良債権の処理は進展しましたが、企業のリスクテイク能力はむしろ減退した感があります。何をするのにも雇用リストラ優先であり、一部の情報関連産業を除いて、新規事業に果敢に挑んでいくという企業家精神は確実に衰退してきているといっても決して過言ではありません。
これだけの低金利にも関わらず、設備投資は目立って回復してきておりません。わたくし自身、企業の設備投資を改善するためには低金利政策よりも、規制緩和等によって投資環境等をよくしてあげることの方が効果的ではないかという気もしています。低金利政策が景気政策上、もはや来るところまで来てしまっていると考えております。
むしろ、ここでゼロ金利政策解除くらいのことが吸収できないようでは、わが国の経済は救いようもありませんし、回復の見込みもないのではないでしょうか?因みに6月末時点での各国の公定歩合は、米国で6.0%、英国6.0%、ドイツ4.25%、フランスでは3.25%であります。公定歩合がそれだけの水準でも金融機関や一般企業は利益を出し金利をしっかりと払えるということであります。翻ってわが国をみれば0.5%と、何と情けないことか………。
わたくしは必要以上に敏感になりすぎることで免疫力を低下させ、わが国経済が更に脆弱になってしまうことを恐れるのであります。厳しい時代を乗り切って好景気を謳歌している米国の企業群をみるにつけ、そうした多くの企業がわが国のほとんどの有力企業を次ぎ次ぎに淘汰・吸収していくような未来がこないとも限りません。彼らはそれだけタフな国際競争力というものを確保しつつあるのです。
6)日本経済全体のモラルハザードを防ぐために!
よくゼロ金利を解除した場合の経常利益減益幅は何%というような試算をやっておりますが、わたくしに言わせれば、今のゼロ金利の状況こそが経済常識からすれば異常なのです。定期預金金利が1%もない、こんな異常な状況を続けることは人々の経済感覚を麻痺させるだけであります。そごう問題で厳しく問われた企業の倫理感の危機、モラルハザードを招くような気さえします。
つまり、わが国金融機関が隔絶された状況の中で甘え、企業も更に甘える、「金利の払いは何とかしてくれ」と。しかし、よくよく考えれば、このような極端に低い金利さえ払えないほど収益の出ない企業とは何でしょうか?果たして健全な企業と呼べるのでありましょうか?日本経済全体の不況とみずからの努力不足とをごちゃ混ぜに議論してはいけません。
また、日銀による金融政策の柔軟性確保という点からも、もはや打つ手がないという現在のような状況はできるだけ早く何とかしなければならないということも事実であります。政策金利がゼロであってはそれ以上どうしようもないのであります。
したがって、なるべく早くにこうした異常金利の状況から脱却すべきであるとわたくしは確信を致します。わたくしが毎月行っている平成目安塾におきまして、先般、「日銀は低金利政策を続けた方が良いか」と質問したところ、70人いた参加者のうち実に7割の方が「なるべく早く金利を上げた方が良い」と回答しました。国民の意識は既にそこまできております。わたくしは、確実に来るべき時、すなわちゼロ金利に象徴される超低金利時代に幕を下ろすべき時期が近づいていること実感します。 今後とも金融政策の動向に十分注意を払い、引き続き大蔵委員会理事として、国政の立場から日銀の政策判断をチェックしていきたいと存じますので、皆さんもご意見・ご質問等があればをドンドンお寄せください。
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