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1.はじめに・・・
皆さん、こんにちは、桜田義孝です。夏休みも終わり、目先臨時国会開会を控える中、構造改革に向けた本格的な議論が進みつつあります。小泉総理が繰り返しおっしゃっているとおり、「構造改革なくして景気回復なし」との信念の下、私も全力で「構造改革推進勢力」として活動を展開していきたいと思っています。
さて、今回のこの絆では「構造改革と景気回復」というテーマで私の考え方を皆さんにお話しようと思います。最近、マスメディア、エコノミストと呼ばれる方々の中には、「痛みを伴う構造改革は今やるべきではない」という論調が目立つようになりました。
この点、私はこの絆でも何度も述べているとおり「これ以上の先送りをすべきではない」という考え方であります。しかし、まだ、具体的に何をどうすべきかという点については詳しくお話していないので、この点を皆さんに明らかにしておきたいと思います。
2.不良債権問題の解決に向けて・・・
まず、わが国の構造改革問題を考えるうえで、すべての障害になっているものとして、「不良債権問題」があります。いわゆる「骨太の方針」等においてもこの問題は、「解決しなければならないまず第一の課題」として位置付けられております。
景気・経済というのは、要はお金が回るか、回らないかであり、今のように不良債権が「ガン」となって、こうした血流を遮っている限り、まともな企業にもお金が回らず、どんどん腐り始めてしまいます。今の景気の悪さの根本は不良債権にあるといっても決して過言ではないのです。
小泉総理は施政方針の中で、既存の不良債権は2年、新規のものは3年で処理するということを明確にされました。これは確かに明確な年限を設けて処理の決意を表明したという点では高く評価できると思います。しかし、私としては、この2〜3年で不良債権を処理するという案について、いささか検討の余地があると考えております。
まず、今の銀行というのは、景気の悪化から非常に低い利ざやを強いられております。ある調査によれば主要行平均でも貸し出しに対して0.58%という統計もあります。一方米国は3.3%程度もあるというのです。
つまり、わが国と米国の金融機関の経営効率はそれだけ違うということになります。そして、わが国の場合、米国と大体同じ程度、毎年▲1.2%ずつ貸し出し内容が劣化している(不良債権が発生している)というのですから、不良債権の処理が進まないのもうなずけます。利ざやだけみても、不良債権処理の余力というものがないのです。米国に対して日本の銀行はなお厳しく経営の効率化に努めなければなりません。
仮に不良債権処理を性急かつ即時的にやり過ぎたような場合、銀行が一度に多く整理されることは覚悟しなければなりませんが、この場合、俗に「ハゲタカファンド」と呼ばれる米国等の金融資本がとんでもなく安い金額で日本の金融機関を次々に手に入れてしまうことでしょう。
実際、リップルウッドホールディングズという米国の投資会社は3兆円も公的資金を費やした長銀をなんと10億円で手に入れました。金融破綻処理で外資頼みになる同じような例が増えつつあります。先行き金融システム全体が米国の手の平に乗ってしまうこともあり得るのです。
ここで、私が何を言いたいのかというと、確かに不良債権の処理は急がなければならないが、掛け声倒れにしないためには、2〜3年という数字にとらわれることなく、景気情勢を考慮して多少の含みをもたせるべきであるということであります。雇用問題への影響は特に注視しなければなりません。
その代わり、どの程度直接償却を求めるのか、引当率はどうすべきか等具体的な処理方法について徹底的に精緻な政府案を提示すべきでしょう。マーケットは一番これを好感すると思います。今の不良債権の深刻さを考えるとどうも2〜3年というのはどうしても性急すぎる気がします。最低5年程度は様子をみても良いのではないでしょうか。
まず、新規雇用の創出や各種セーフティーネットの充実で現在の失業者数330万人(失業率5%)から200万人(同3%)まで下げられる環境を整えるべきでしょう。具体的な失業対策として、職業訓練機関の充実や失業訓練中期間の給付金増強等、各種政策メニューが整合性をもって速やかに実施・運用されていく必要があります。
3.産業構造全体のソフト化を具体的かつ早急に実施すべき!
不良債権の処理に具体的な方向性を固めた上で、いよいよ経済の中身を議論する必要があります。ここで皆さんに提示したい数字があります。各国の産業構造の比較であります。
わが国産業全体に占める第三次産 業(サービス業)の比率は61%であ りますが、米国は既に71%、英国で 67%、フランスで64%と、わが国の
比率は主要国いずれに対しても劣位 にあります。それだけ産業の高度化 というものが進展していないのであ ります。私は、こんなところにも現
在の不況の原因があるのではないか という気がします。
企業経営者にとって頭の痛い人件費でありますが、今や労働賃金が、シンガポールでは日本の1/6、中国では1/30ともいわれるなど、企業の海外生産シフトはかなり進んでいます。ある統計によれば、この10年で海外生産比率は10%も上がり、現在では15%にも達しているということです。逆輸入現象も発生し、わが国の貿易黒字はドンドン減っています。貿易黒字が問題視されたかつての日米貿易摩擦時代からは隔世の感があります。
そして、これはそれだけ、国内の工場が減り、雇用調整も行われているということを意味します。したがって、国として成長率の鈍化を回避するためには、国内産業を労働集約型の製造業から知的集約型のサービス業へ、ハード重視からソフト重視へ転換していかなければならないわけですが、実態としてはなかなか追いついていないのであります。
例えば、米国では、日本との競争に打ち勝つため、海外生産比率は既に33%にも達しています。しかし、他の生命・宇宙科学、先端技術、金融部門等の高度ソフト分野では日本をはるかに凌いでいるのが現状です。
私は、こうした産業の高度化こそ、不良債権問題解決と並ぶわが国の重要課題であると考えます。目下、竹中大臣率いる経済財政諮問会議では、新産業育成ということで、いろいろな案を提示し、5年間で530万人の雇用を創出できるとしておりますが、この議論ももっと具体化すべきでしょう。役所は文章をつくるのはうまいのですが、実際に効く政策というものを作れるかは別議論であります。いつもメニューだけ多くて、掛け声倒れになってしまうことも多いのが実情です。
産業構造全体のソフト化を図る中で、私が重視しているのは、官から民への事業移管ということであります。もっといえば特殊法人のゼロベースからの民営化であります。今多くの事業が国からの補助金を受けて官が行っているかたちになっています。そこにはさまざまな無駄が発生し、とても返せないような巨額の借金を抱えている公団もたくさんあります。私はこれを民営化していけばかなり国民経済計算的にプラスになると考えています。
JRもNTTも「サービス産業の雄」として成功致しました。いまや税金を使う側から巨額の税金を納める企業体にまで成長することができました。我々が受けるサービスの質も明らかに良くなったと思います。そうした企業の幹部に聞くと、「やはり民営化することによって士気が上がり、社員の顔色も良くなった」という声が聞こえてきます。お客様にサービスをし、業績が上がれば自分達にも利益がもたらされる、要は「やる気」が出てくるということです。実はこの「やる気」、市場経済の中では一番重要な要素です。
また、ちょっと脱線しますが、特殊法人の代表が「総裁」というのはどんなものでしょうか。「社長」ではなぜいけないのか。「俺は総裁だ」などと威張っていても、使われているのは結局税金でしょう。渡り鳥といって退職金を何千万円も受け取って、総裁や理事長を転がっていく。我々は総裁の住宅ローンや海外旅行のお金を出すために税金を払っているわけではありません。そんなに余っているなら税金を返してもらいたい。特殊法人を民営化していくことでそうした特権意識を徹底的に粉砕することができます。
今の多くの公的事業で民営化できるものはたくさんあります。また、時代にあわず必要なくなったものは速やかに廃止していくべきです。そこに投入されていた資金が民間の投資に回れば良いのです。
特殊法人の完全民営化等の見直しを断行していくことで、公的コストを少なくできたうえで、受けるサービスの質も向上するなど、必ずや国民的利益に繋がっていくと私は信じています。
第三次産業への転換、経済構造のソフト化を実現するために、ひとつ別の切り口からの提案をしておきましょう。それは「都市再生」ということであります。
わが国はこれから人口がどんどん減っていく超少子・高齢化社会を迎えます。そうなると何としても経済のソフト化を図って付加価値性の高い産業構造にする必要がありますが、そのためには人口の都市への集中が必要になってくるのです。
今までわが国の国土計画においては、「均衡ある発展」ということで、どちらかといえば都市集中を解消するような政策がとられてきましたが、2007年をピークとして人口そのものが減っていくわけですから、再検討が必要です。むしろこれからは、核となる主要都市にいかに効率的かつ集中的に公的資源を配分し、いかに魅力ある都市を整備していくかが、産業高度化・ソフト化のカギになると思います。
ここに良い例があります。世界の歴史上で人口が減って国が栄 えたという例は一つしかありません。それは中世から近代にかけ
てのイタリアの貿易都市です。ペストで人口が1/3程度にまで 減ったにも関わらず、ルネッサンスを開花させ、栄華を築きまし
た。それは都市に人口が集中し、産業構造がソフト化されたから もたらされたものです。つまり、都市が集中的に発展し、その中 でソフトが育まれることが必要なのです。
4.リスクマネーがつきやすい金融体制の構築こそカギである!
さて、以上のように官から民へ移管を進めるとともに、竹中
さんの言う新産業支援のプログラムを具体化していき、「さあそ れでは新しい事業の構想ができた」としましょう。次に問題に
なるのはこうした事業にどのように資金(リスクを取るお金と いう意味でリスクマネーと呼ぶ)がつくかという点です。わが
国の場合、この点は猛烈に反省するとともに、制度・システム を構築しなければならないと思います。
私の著書「元気出そう日本」の中でも述べてありますが、日本の開業率は直近で3.7%、これに対して廃業率は3.8%と、廃業が開業を上回っており、しかも新陳代謝は極めて低い状態です。米国の場合はどちらも10%を超え、しかも開業が廃業を上回っているのです。
まず第一にやるべきことは株式市場の活性化等による直接金融(リスクマネー)部門の充実です。現在、わが国には1,400兆円の個人金融資産残高がありますが、株式は4%程度です。資産残高のほとんどが銀行預金か郵便貯金というのが実態であります。わが国の国民は総じて株を好きではないということができるでしょう。しかし、シミかしらみのような金利の中ではこうもいっておられません。高齢化社会の中では自分の老後資金はある程度自分で運用して得るというスタンスが不可避であります。既に1,400兆円の個人資産があるわけですから、仮に運用の利回りが1%上がれば14兆円ものお金がマクロで国民のお財布に入ることになるのです。これは消費税収入を軽く上回るほどの金額です。
株というのは直接個人が企業を選んで投資するものですから、当然、リスクがあります。倒産する企業に投資すれば、投資資金はパーです。しかし、きちんと銘柄等でリスク分散し長期で保有すれば年間10%くらいの利益を得ることができる大変利回りの良い投資といえます。
つまり、わが国は早急に株式市場に一般個人を呼び込む必要があるといえますが、そのためには、まず株式投資を税制面で思いっきり優遇する必要があります。例えば、損を出したら5年間に渡って控除を繰り越せる仕組みを作ったり、キャピタルゲイン課税については現行の申告分離課税の税率26%を10%以下まで下げることなどが有効です。
ドイツなどは株式譲渡益課税を廃止し、株式市場を活性化させることに成功しました。日本の現在は市場はバブル最安値を連日更新するなど、恐ろしい水準まで低下しております。政府としても株式市場の再生のための決意を明確にし、早急に手を打つ必要があるでしょう。
また、私は一個人が株購入等の直接的手法でベンチャーの企業等に出資する場合、ある程度の金額までは個人所得から控除するという一歩踏み込んだ直接投資優遇策もあると思っています。例えばある事業に1,000万円必要で縁のある個人サラリーマンが100万円ずつ出すような場合は所得からそっくり控除したらどうでしょうかという話です。財務省は「出資そのものを税金から控除するということは、税金で個人資産を買うようなものなので難しい」と難色を示していますが、私は直接金融優遇・リスクマネーの増大のためには、既定概念を打ち壊すくらいの覚悟が必要だと思います。
ここまで私が直接金融にこだわるのは間接金融の担い手である銀行群がそういう役割を全く果たせていないからであります。もはや銀行は凋落産業のひとつに数えられつつあります。土地担保主義だけで来た銀行には今や事業採算を見抜く融資能力というものがないのではないでしょうか。お金を返してもらえなくても、リスクは発生しないというような制度を続ける限りは金融機関の投資・融資能力は向上しません。欧米の投資銀行とはこの点で大きな差があります。先行きわが国の金融市場が欧米によって支配される可能性があるという懸念は、こうしたことからも十分可能性があるといえるのです。
日本の銀行が生き残れるとすれば、真のプロジェクト融資能力を持つことでしょう。土地担保主義だけでは手詰まりです。ますます銀行の存在価値というものが問われてくると思います、政府としても土地担保主義に変わるような新しい担保制度の構築をすべきではないでしょうか。
例えば今の連帯保証人制度も限定的な融資枠を設けて何人かで責任を分有できるようにシステム化したり、もっと担保制度のあり方を使い勝手の良い、リスクマネーのつきやすいものにできないものでしょうか。
これからは個人がリスクをとって、企業や運用方法を選ぶ時代です。そうした厳しく賢い個人投資家が企業を育て、結果的にマクロ経済を活性化させていくのです。政府の役割はあくまでその「呼び水」を制度として整備しておくことだと思います。
5.おわりに・・・
今回はわが国の経済を再生するための構造改革の具体策として、不良債権問題、産業構造のソフト化、そして、リスクマネー充実化策等を中心にお話をさせていただきました。日本の経済構造改革に勇気をもって挑戦できるには、日本人自身がリスクを負って、夢を追い続ける力強い意志が必要であります。
今後、わが国としてはあらゆる英知を結集して、総力を揚げて、この構造改革の問題に取り組まなければなりません。問題先送りはもうこりごりです。一刻も早くわが国の景気を立ち直らせるために、ともに構造改革に向けて頑張ろうではありませんか。経済再生のための皆様方のアイデアもどしどしお寄せください。
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