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泰造 「桜田先生、こんにちは。いつもマナブが大変お世話になっています。私、マナブの祖父の泰造です」
桜田 「初めてお目にかかります。どうぞよろしく」
泰造 「先生、私は政治家に言いたいことがあるんですよ」
桜田 「ぜひ、うかがいましょう」
泰造 「最近の政治は“高齢者いじめ”じゃないでしょうか?年金は下がるわ、医療費は上がるわ、金利は低いままだし…。これじゃあ私ら高齢者に飢え死にしろ、と言っているようなもんですよ。今まで一生懸命真面目に働いてきて、年を取ったところでこんな酷い仕打ちが待っているなんて納得できません!」
桜田 「なるほど、おっしゃることはよく分かりますよ」
泰造 「先生、本当に分かってるんですか!?」
桜田 「ええ。日本が戦後、世界史上類を見ないほどの経済成長を遂げて、これだけ豊かな国になることができたのは、今の高齢者の皆さんが汗水流して働いてくれたからですものね」
泰造 「そうなんです!年を取ると、それでなくても不安というか、心細くなってくるものなんです。僅かな収入を頼りに生きていかなければならないのに、追い打ちをかけるように高齢者いじめが始まったんじゃ、泣くに泣けませんよ!」
桜田 「65歳以上の高齢者だけか、それに18歳未満の子供も加わった世帯を"高齢者世帯"というんですが、高齢者世帯の平均所得は約305万円弱で、これは全ての世帯の平均の半分以下なんですよね。しかも、305万円のうち、年金や恩給が約113万円で約7割を占めているそうです。だから、年金の支給額の削減はまさに死活問題なんですよね」
泰造 「その通り!」
桜田 「でもね、年金についてはこんな試算(日本総合研究所主任研究員・西沢和彦氏による)もあるんですよ。昭和15年生まれで現在63歳の人が、生涯に支払う厚生年金の保険料、つまり掛け金ですよね。これが労使負担を合計して平均2533万円だと言われています。それで受け取れる額は6797万円。払った分の約2.7倍の額を受け取れるんだから、これは悪くない話でしょう」
泰造 「まぁ、ね」
桜田 「これが昭和35年生まれで現在43歳の人だと、払うのが4576万円で貰えるのが4800万円」
泰造 「うん?43歳というとうちの息子くらいの歳だな。うちの息子の世代はたったそれだけしか貰えないのか!」
桜田 「驚くのはまだ早いですよ。昭和55年生まれで現在23歳の人の場合ですが…」
泰造 「マナブと同じ年頃の世代ですか?」
桜田 「ええ。彼らの世代になると、払うのは6345万円、貰えるのは4654万円と言われています」
泰造 「ええっ、2700万円も損してるじゃないか!」
桜田 「この試算はあくまで、現行の厚生年金の方式を維持した場合の話ですがね。ちなみに、平成12年に生まれた3歳の赤ちゃんの場合、7605万円払っても僅か4653万円しか貰えないことになります」
泰造 「私らの子供や孫の世代がそんなひどい目に遭っていたなんて知らなかったな」
桜田 「私が言いたいのは、今の高齢者が年金を多く受け取っているということではないんです。はっきりいって、老後の生活を支える原資としては今でも年金額は十分とは言えないと思う。これを削減するなんて、政治家は高齢者の皆さんをいじめているように見られても仕方がないのかもしれない」
泰造 「そうでしょう?」
桜田 「でもね、今のままでは将来年金を受け取る世代との不公平があまりにも大きいと言わざるをえないんですよ。今の若い人たちは、とっくに年金制度を見限っています。年金なんてどうせ損をするだけだ、という損得勘定に留まらず、年金制度そのものが早晩崩壊するんだから、掛け金なんて払う必要ないじゃないか、というニヒリズム(虚無主義)というか、一種のアナーキズム(無政府主義)にすら陥っている。年金からの離脱権を認めてくれという声もあるんです」
泰造 「何を言ってるんだ!だから今の若者は駄目なんだ。皆で支えあってこその社会保障制度じゃないか。自分勝手なことばかり言っていい気なもんだよ!」
桜田 「おっしゃる通りです。皆で支えあうのが社会保障制度の基本です。そうした制度を安定させていくためには、特定の世代に過重な負担がのしかかったような不公平感や、そもそも制度自体に対して不信がつきまとっているようではいけないんです。今の社会保障制度というのは、人口に若年層が占める割合が高かった時代に出来た仕組みなんですよ。高齢化社会が急速に進む中で、高齢者が多い時代にふさわしい制度にどう再編していくかが今求められているんです」
泰造 「若い世代が、高齢世代の面倒を見る。これが常識じゃないか!」
桜田 「もちろん、それが基本であることには間違いないです。しかしながら、わが国の高齢化はそういう基本路線では立ち行かなくなるくらい進んでしまっている。負担を後の世代に先送りするというのには限界があるんです。同一の世代で手当てをしていく、例えば高齢者の中でも、豊かな高齢者が貧しい高齢者を支えるような仕組みを考える必要があると思いますね」
泰造 「昔は高齢者の数が少なかったからな…。私らが子供のころは80歳の老人なんて、珍しかったもんだよ」
桜田 「70歳を古稀、というのも70歳は古来稀なり、というのが元々の意味ですが、今では70歳くらいは特別な長寿と言えませんものね。長生きは良いことですが、誰もが安心して長生きできる世の中を作っていかなければならない。そのためには最低限それを支えるコストが必要なんです」
泰造 「高齢者にとっては厳しい時代になったな。でも、自民党は年金を下げたり、医療費を上げたりする法案に賛成したんじゃなかったのか?物分かりのいいようなことばかり言って、桜田先生は本当に高齢者の味方なんですか?」
桜田 「私の基本姿勢は今申し上げた通りです。社会の構成が変われば、その社会を支える仕組みもある程度は変えていかざるをえないと思います。私は国会議員として、国会に提出されたさまざまな法案に関わります。そこで何事かを決断し、賛成や反対を決めなければならない。私が正しいと信じて下した判断でも、立場の異なる人たちからは、正しくないように見える場合もあるでしょう。およそあらゆる立場の者が満足できる答えなどあり得ません。しかし、我々政治家はそれがあり得ないことだといって開き直るのではなしに、自らの下した判断に対して国民に積極的に説明し、批判や反対意見を受け入れる用意がなくてはなりません。何が皆にとっての福利なのか、主張の衝突や立場の違いを乗り越えて、積極的にそれらを取り上げていくこと。これが政治家の、また主権者である国民の務めではないでしょうか」
泰造 「桜田先生は私らの意見も積極的に取り上げてくれるんでしょうね」
桜田 「もちろんですよ。いつでも話し合いましょう、この国の将来について」
泰造 「よし、そのためにもますます長生きするぞ!」
桜田 「その意気です。がんばってください!」
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