桜田 よしたか
自由民主党
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元気だそう日本! 桜田義孝の日本国改造私案
第一部 二十一世紀目指すべきこの国の「かたち」と「こころ」
第六章 国民が安心できる安全保障と危機管理
1 国民が安心できるためには何が足りないのか?

さて、この章では、皆さんとともに、わが国の安全保障と危機管理の問題について考えてみたいと思います。

皆さんは、いま、この国に住んでいて安心できるでしょうか。わたくしは自信をもって「ハイ」とは言えません。依然この国はわれわれが安心できるほどの体制の整った国ではないと評価しています。それでは一体どこが足りないのでしょうか。いくつかありますが、やはり決定的なのは法制度の不備だと思っています。

憲法第九条については、これまでの章でいろいろ述べてきたのでやめておき、ここではもっと踏み込んだ具体的な話をしたいと思います。わたくしが喫緊に検討が必要であると思っているのは、国の有事法制に関する議論であります。

武力紛争のようないわゆる有事については、「あって欲しくない」ということと、「実際に絶対あり得ない」ということは違います。外交等の努力によって絶対回避するように全力を尽くすのは当然ですが、国際情勢というのは天災と一緒で、いつ何が起こるかわかりません。事実、少し前、北朝鮮のミサイルらしきもの(敢えてらしきものとしておきますが)が本州東北地方を飛び越えたではありませんか。ただし、喉もと過ぎれば何とやらで、多くの人々の意識からは薄らいできておりますが・・・

パレスチナをみてください。アフリカをみてください。日本は平和だというけれど、世界中のどこかで必ず紛争が起きているのが現実です。何も、わたくしは人々の不安をかきたてようというのではありません。ただ、冷静に歴史の現実というものをみているだけであります。

だからこそ「備え」が必要なのです。われわれは国防・安全保障問題をいやなものでも直視していかなければならない。これは国家を形成する以上、必要不可欠なことであります。特に政治家は、国民の生命・財産・文化を保全することが仕事の一部ですから、厳しい問題意識と関連する知識が必要であります。

ここで、「直視する」ということは、客観的に今、国防政策が充分なものか、仮に改善の必要があればどんなことか、うやむやにせず充分議論したうえで、対策を講じていくということを意味しています。

具体例を挙げましょう。例えば、どこかの国のゲリラが入ってきて国民の生命を危険にさらし、かつ国民の財産に著しい打撃を与えるような活動をしてきたと仮定しましょう。人質をとったり、建物を破壊したりしたとします。

その際、自衛艦が港を使ったり、道路を装甲車が走るといった場合のことが法律に定められていなければどうでしょう。戦車が駐車違反に問われたらどうしましょう。部隊が陣地を築こうと考えても、その場所がたまたま自然公園の区域内であれば、環境省との間で面倒な手続きを踏まなければなりません。また、ミサイル攻撃の余波で民家を破損した場合の扱いはどうすれば良いか。有事の際のことが法律に明記されていなければ、自衛官は不法行為を行っての刑務所行きを心配しながら、防衛活動を行うことになってしまいます。

これではゲリラに対して充分な反撃はできません。その間に何人もの人間が死んでしまったら、とんでもない救い難いことです。この場合、国民の生命を守るべき国の法律が逆に人の生命をドンドン奪ってしまうことになる。北朝鮮不審船問題は、こうしたことが実際起こり得る問題であるということを、われわれに教えてくれました。危機は映画の中に限ったことではなく、現実に有り得るものなのです。

したがって、有事法制議論は必要です。遅きに失したことは疑いありませんが、多くの国民の議論を経て進めていくべきであります。そして、この際、できるだけ多くの層を巻き込んでいくことが重要であります。他ならない皆で皆のことを守るのが、安全保障の本質なのですから・・・・・

第151回通常国会の所信表明演説の中で、森総理は有事法制議論を前向きに検討すべきであると述べられました。この本が出版される頃までにどの程度議論が進んでいるかわかりませんが、わたくしも積極的に参加していく所存であります。

2 国家情報機関の拡充とIT対策が安全保障の要である!

@ 国家情報専門機関の充実が柱となる!

いうまでもなく、安全保障・危機管理政策には情報収集・解析能力が不可欠であります。適時・適切な情報なかりせばきちんとした対策を講ずることはできません。情報のミスリードは必ずや惨劇を招きます。

冒頭の言い方に変えると、国民が安心できるためには、絶えず世界情勢についての的確な情報が必要であります。これはすべての大前提であります。

まず、情報力という意味では、現在の組織体制には大きな問題があると思っております。皆さんは内閣情報調査室という名前を聞いたことがあると思います。この機関は、内閣総理大臣を情報面でバックアップする機関であり、本来国の情報収集の総元締めであるはずの部局ですが、実際は百人程度しかおりません。ですから、新聞や雑誌の切り抜き程度の仕事だけで一日が終ってしまうそうであります。

人間を使った情報収集等に十分な時間をさけていないのが実情であり、早急な改善が必要であります。わたくしは、十分な情報収集・解析活動をするためには、国内情報部門、国際情報部門、軍事情報部門等合わせて最低千人くらいの体制は必要であると思います。情報収集衛星の導入が決まった今、ちょうど良い時期であると思います。なお、平成13年4月開設予定の内閣衛星情報センターの定員は約300名となる方向です。因みに米国のCIA(中央情報局)は約1万人いるそうであります。

確かに現在でも、自衛隊の統合幕僚会議に情報本部もありますし、外務省にも国際情報局もあります。公安がらみであれば公安調査庁だってあります。しかし、これらが十分内閣情報調査室と連携がとれているとは言いがたい。情報とは、総合的に集めてみて初めて全体像がみえてくるものであります。収集と解析、これを繰り返して行うことで情報としての精度を高くしていくことが大切なのです。

したがって、情報に関しては、各諸官庁に優越的に権限を与える情報専門機関が不可欠であり、当面内閣情報調査室を拡充することで対応できるはずであります。陣容がそろえば、単に情報を集めるだけでなく、情報調査に関する思い切った企画関連事務も可能になります。

また、外交機密費も随分騒がれましたが、あのようなものは交際費で落とし、機密費はもっと国際情報収集活動のため有効に使うべきであります。この点、今の安全保障政策には情報戦略という思想が欠落しているとしか考えられません。日露戦争時、有名な明石元次郎大佐は、ロシアに赴き、ロシア革命を煽る工作をして日本の勝利を裏で支えました。こうした事項に使うのが本当の機密費と呼べるものであって、首相の滞在費などに使うお金ではないはずであります。

A21世紀の安全保障を考えるうえで欠くことのできないIT防衛力の整備

また、情報収集・解析能力の他に、今後はIT対策の一環として、情報保証ということが重要です。これは、保有する情報に関し、内容が改ざんされたりすることなく、適時適切に使用することができるような状態が保たれ、秘密にする必要があるものについては秘匿性が保たれ、権限のない者が、権限のある者になりすまして、当該情報にアクセスすることを防止するといったことについて、確実に実施されることであります。この情報保証は、@で述べたインテリジェンス機能とともに、米国において重要な位置付けをされています。

情報保証を確立するためには、情報が取り扱われるネットワークシステムをハッカーや内部の不届き者からのサイバー攻撃から守り、緊急事態に対処するための人材及び組織を保有すべきです。

そのためには、わが国においては、組織の設置や予算の確保のみならず、平素から、自衛隊が民間企業や米国等の諸外国と幅広く連携をとり、最新の技術動向を常に把握して、一朝事あるときには即応できる態勢が必要です。

例えば、米国連邦政府の委員会では、サイバーテロ対策として、米国内のハッカーを正式な会議の場に呼んで、米国の全コンピューターネットワークを何時間で破壊できるか意見を聞いたりと、随分積極的なことをいろいろやっています。先に述べたようなIT社会の中での安全保障を考えた場合、こうしたことが必要であります。

仮に、情報保証が確立されている国とそうでない国とが対立した場合、従来の戦争形態と異なるいわゆる「サイバー戦争」においては、前者が実際に戦力を動かす前に後者のコンピューターを全部ダウンさせて、そこで既に勝敗が決まってしまいます。すなわち、最近のITの飛躍的進展は、一国の安全保障のあり方を変えてしまうだけのダイナミズムを持っているのです。

3 日本の防衛に不可欠な戦域ミサイル防衛構想への参加!

さて、北朝鮮のテポドンには、皆さんも度肝を抜かれたことと思います。まかり間違えば東北地方に落ちていたかもしれなかった。そう思う時、本当にぞっと致します。やはり近隣にミサイル保持国家がある以上、それなりの対策というものも考えなければならないと思います。

しかし、有効な対策と言っても今のところ、十分なものは何もありません。外交努力等によって、そうした事態を防いでいくことしかないというのが現状であります。

ただし、先行きの技術力の進展によって、有効な対策になり得ると期待されているのが、米国が中心となって進めている戦域ミサイル防衛構想であります。わたくしは、この構想に、わが国は積極的に参加していくべきであると考えています。

わが国はいうまでもなく平和国家であります。ですから、核兵器をもつ必要はありません。わが国のあるべき姿を考えても、相手国を核攻撃するという事態はまず想定できません。想定できるとすれば、他国の核攻撃から自国を守ることであります。

この点、戦域ミサイル防衛構想は、侵略兵器ではなく、防衛に徹した考え方を持つ装備であり、わが国の安全保障思想になじむと思うのです。戦域ミサイル防衛とは、敵弾をミサイルで迎撃する防衛方式であり、簡単に言うと、フセインがスカッドミサイルでイスラエルを爆撃した際に活躍したパトリオットミサイルを更に進化させたようなイメージであります。

実際命中するかどうかについては、鉄砲玉を鉄砲玉で打ち落とすくらい難しいという言われ方もされています。しかしながら、これまでの米国の努力などにより、ミサイル防衛システムの技術的基盤は一般的には確立されており、また、日本自身もいろいろな要素的技術を保有していることから、わたくしは、この構想は技術力の進歩によりかなりいいところまでいくとみています。問題は、研究当初からきちんと基礎研究に踏み込んでおけるかどうかであり、この構想に対する日本の積極的な参加は、必ずや国益につながると思います。

仮にこの戦域ミサイル構想がうまくいきますと、核が無力化しますので、特に核保有国等一部の国から問題であるという批判もありますが、核が有効な兵器であること自体が大変問題であり、こうした批判は全くあたらないと思っています。

4 いざという時に役にたつ正面装備を整備しておくべき!

北朝鮮の不審船問題の時、一番問題になったのは防衛装備の問題でした。肝心の不審船に追いつける高速艇はないわ、踏み込んで臨検するための防弾チョッキはないわ、正にないないづくしのオンパレードであり、とても不審船に乗り込めるような体制ではありませんでした。

つまり、防衛関係者の誰もまさかそういう事態になるとは思っていなかった。わたくしは、日米ガイドライン関連法の審議の際、時の防衛庁長官に厳しく問いただし、その後の予算において、結局、全護衛艦に防弾チョッキが配備され、高速艇も導入されることとなりましたが、そもそもあらゆる事態を想定した正面装備の見直しは防衛政策の根幹であり、当局の意識改革が緊急課題であります。

こうしたわが国の正面装備の不十分性は、いたるところでみられます。例えば戦車であります。わが国に戦車が比較的多いのは、もともとの仮想敵国が北海道から攻めてくることを想定したからだとされています。しかし、北海道から敵が攻めてくるという状況も考えにくい。もっとわが国のおかれている現実をみれば、おのずとどんな正面装備が必要なのかみえるはずであります。

今の九○式戦車は大きすぎます。とても公道は走れません。どうせ戦車を整備するならもっと小さくて軽い戦車が必要であります。そもそもわが国は平野が少なく、戦車が役にたつ地形ではありません。むしろゲリラコマンドウ対策として、アパッチのような攻撃ヘリコプターや都市部を自由に走れる装輪装甲車を備えておく方が有効であると考えられます。この際、ハードに合わせて、ゲリラコマンドウ対策の部隊の訓練もしっかりとしておくことが要請されるところでありましょう。

また、空母をもたない以上、空中給油機の整備は不可欠であります。ようやく与党合意ができたようなので、この点は前進だと思っております。

 いずれにせよ国民の貴重な血税を使う以上は、わが国防衛力における正面装備の見直し・改善は不可欠であり、今後わたくしも、しっかりとフォローしていきたいと思います。

5 防災・災害担当機関の充実で不測の事態に備えよ!

   ―― 緊急災害救助隊の常設は外交政策上も有効な政策となる

さて、危機管理という意味では、わたくしは自衛隊依存になっている現行の防災・災害対策体制を改革すべきであると思っております。災害時における自衛隊派遣は今や欠くことはできませんが、理想的には彼らの仕事はあくまで防衛であって防災ではありません。

地震や洪水のような時、そうした災害を専門的に扱い事態の収拾に当たる、充分な技術対応力を持つ専門機関の充実が必要であると思います。最近の有珠山や三宅島の噴火、大洪水等をみておりますと、なおさらそうした思いを強く致します。米国の場合は、連邦危機管理庁という大災害対策機関が現に存在致します。

現在、防災といえば、各市町村が管理する消防署が主体でありますが、阪神大震災の教訓から、広域的な連携や災害対策技術の向上が大きな課題となっております。消防署職員の全国統一の研修制度を内容的にもかなり濃いものとして実施し、消火活動だけでなく、いざという時の緊急災害対策全般に、十分組み入れられるようにすべきであると考えます。危機管理室等国の専門職員も充実させるべきでしょうし、緊急災害救助隊の常設も検討課題であります。

日本が防災という意味での真の国家対応機関を確立すれば、最近インド等でみられる大地震等世界的な大災害への国際救助隊の派遣等ももっとスムーズにいくと思います。どこの国をみても自衛隊がいくという例はないと思います。やはり災害に関する専門的な知識と対応力をもった救助隊が常時あった方が良いと思いますし、こうした緊急災害救助隊は、相手国に飛び込んで人命救助等を行うという意味で、国際関係を良くすることにも非常に有用であるという見地から、わたくしとしても充実に向け検討を開始しているところであります。

また、防災・災害対策を考える場合、重要な視点として、今後の防災・災害対策においては、NPO(非営利活動法人)の積極的な活用も重要な課題であると思います。阪神大震災の際は、ボランティアが大変活躍したことは記憶に新しいと思います。こうした組織がうまく連携を取れれば、いろいろなプラスの相乗効果が出てくると思うのです。防災当局がこうしたNPOの情報や活動を政策に積極的に生かしていくことができれば、行政の効率化にも資すると思います。

以上、わが国の安全保障と危機管理に必要なことを考えてきました。21世紀のこの国の「かたち」と「こころ」を考えるうえで、国土と国民の安全を考えるうえで大前提であります。

最後に強調しておきたいのは、皆さんの意識の問題であります。最初に安全保障・危機管理問題に関しては目をそらさず、直視することが重要だと申し上げました。正に国民各位にこの姿勢が求められております。

いざという時の心構え・意識こそが制度を活かし、国民の安全を守ることができるのであります。これまで申し上げたことは、すべて皆さんの安全意識が前提であります。
有って欲しくないということと、実際に有りえないということは別であります。この点、うやむやにせず、今こそ安全保障の問題と危機管理の問題をしっかり議論していこうではありませんか。

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