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| 元気だそう日本! 桜田義孝の日本国改造私案 |
| 第二部 日本政治の舞台裏 ―― 日本政治の現状と桜田義孝の政治哲学 |
| 第一章 日本の国会議員の実情と今後の展望について―桜田義孝の国会議員制度改造論 |
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1 国会議員になって驚いたこと・・・その勉強会・勉強量の多さ
さて、わたくしの目指すこの国のかたちについてご理解をいただいた後は、そうした政策を実現していくうえでの、インフラとなる政治や行政の実態と今後について、皆様と一緒に考えていきたいと思います。
まず、そのはじめにわたくしが皆さんにお話しておきたいのは、国会議員の勉強量の多さについてです。わたくしが国会議員に初当選して、一番驚いたことが自由民主党本部での朝の勉強会の多さでした。大体、朝の七時、八時から本会議が始まるお昼くらいまでの間、永田町の自由民主党本部では、外交部会、財政部会、国防部会等各分野に分かれて政策会議、勉強会を開催しています。どの部屋も熱気に包まれ、政治家と官僚の激しいやりとりが聞こえてきます。
役所の説明の不十分さを叱責する議員、淡々と自らの政策知識を述べ続ける議員、ヤジを飛ばす議員、何とか会議を収束させようとする部会長も一苦労であります。
わが国の場合は最終的に法律を通すのは衆・参本会議でありますが、現状は、自由民主党の政務調査会の下にある、こうした部会と呼ばれる会議で了承された時点で、ほとんど決まってしまうのが実情です。皆さんも外交部会とか、建設部会とか、文教部会などの名前を聞いたことがあると思います。
この部会は、自由民主党としていろいろな政策を了承するという意味と、若手政治家が直接官庁の最高幹部から政策について説明を受け、自由闊達に発言できる研鑚および自己アピールの場でもあるのです。しっかりとした発言をすれば、それこそ党の政策判断に大きな影響力を与えることができますし、マスメディアも取り上げてくれます。
部会の数については大体省庁に対応しており、数を減らしたといっても十二もあるほか、部会の下には、更に専門委員会や小委員会と呼ばれる会議が設置されることもあるため、国会会期中の午前中の忙しさは、目が回るほどであります。部会は大体複数が同時平行に開催されておりますから、自分の特に興味がある会議をはしごするわけですが、それだけでへとへとであります。
世間では、テレビドラマ等で政治家は、赤坂の料亭をはしごするような存在としてステレオタイプ化していますが、これは適切ではありません。普段は窓際税務署員なのに巨悪が出現するとマルサに豹変する国税査察官を主人公にしたテレビドラマがシリーズ化されておりますが、必ず政治家(しかも衆議院議員)が悪役として登場します。ドラマ自体は面白いのですが、ああいうことで政治家について表面的なイメージが作られていくのは、何だかとても悲しい気がします。
本当の政治家は異常に勉強しているというイメージのはずです。料亭をはしごするような余裕のある政治家はごく一部であり、大半の議員は朝は部会の勉強会をこなし、夜は勉強会や会食、後援会の会合等をこなした後は、宿舎で勉強等をしていると思います。
いささか極端なことを申しますと、政治家は勉強が嫌いではとても勤まらない。正直言ってこれだけ文章を読んだり、勉強したりというのも受験勉強以来ではないでしょうか。それだけ勉強しないと、専門的な政策議論を官僚と戦わすことはできない、世の政策の流れについていけないというのが実情なのです。
2 所属委員会の同時開催を可能にしている現行委員会制度は大問題である!
先ほどちょっとわが国の政策形成過程についてお話致しましたが、わが国の場合、法律は本会議にかけられる前、各政策分野の委員会において十分審議されます。衆院外務委員会、国土交通委員会とか、そういうもので、これらはほぼ省庁に対応してあります。この点は先に申し上げた党の部会と同様です。こうした委員会を通ったものが本会議で覆される例はまずありません。
英国などですと、本会議場で対面した与野党議員が激しい議論をしますが、わが国の場合、本会議は与野党の代表者が一方的に演説する場となっており、白熱した議論といえば委員会が中心となります。ですから、英国のような本会議中心主義に対して委員会中心主義といわれることがあり、米国連邦議会もやはり委員会中心主義をとっています。いずれもメリット、デメリットがあり、どちらが良いと簡単にいうことはできません。
さて、この委員会が大変問題なのです。大体一般の議員は前の国会でのわたくしのように大蔵委員、建設委員、特別委員と二、三の委員会を兼務しているわけですが、それを同時にやることがあるのです。大蔵委員会と建設委員会が同時に開かれたことなど、ざらであります。国会の審議日程が詰まってしまってどうしようもないわけですが、二つも体がない以上、大蔵委員会と建設委員会に同時に出られるわけがないのです。実際には交代交代で出ているのが実情で、落ち着いた審議などできません。この点、改善が必要だと思います。
こうした委員会の重複を招いてしまっていることの背景には、内政分野での国政の領域が多すぎることも挙げられると思います。他の国では地方がやっていることまですべて、この国では中央政府がやっている。自治体での法律の運用に関する実に細かい分野まで国が口を出している。このことは大変大きな無駄を生じさせていると思うのであります。
わたくしが主張したいのはあくまで道州制の導入です。わが国を道州制の国にして、大半の権限を道州や市町村合併で数の減った新しい基礎的自治体に委譲すれば、中央政府を思い切ってスリム化できるはずであり、衆・参両院の各委員会制度ももっと内容の濃いものになり、また、運営上、所属委員会の同時開催などの現象も解消できるはずであります。現在のような形式重視主義だけでは、法的手続きは守れても弊害の方が多いように思うのです。
3 真の政治主導実現のためには国会答弁の効率化が不可欠である!
わたくしが大臣政務官に就任してから早三ヶ月が経とうとしておりますが、政府の一員となって驚いたことの一つは、総理をはじめとする各省庁の大臣が国会答弁のために拘束される時間の長さです。例えば、予算審議が行われる通常国会開会後の最初の数ヶ月は、全省庁の大臣がほぼ毎日、予算委員会等における答弁のために七時間、八時間という時間、委員会室に拘束されます。また、答弁を行うためには準備の時間も必要であり、各省庁とも早朝から、大臣、副大臣、政務官、それに関係する事務方の幹部が一堂に会し、一時間程度、長い時にはそれ以上、答弁の打ち合わせのために時間を費やします。
もちろん、わたくしとしても国会答弁が無意味だといっているわけでありません。そのようなことを言えば、日本国憲法に掲げられる主権在民という崇高な理念を否定することになります。わたくしは、予算案であろうと法案であろうと、国民の皆様から選ばれた国会議員がきちんと精査すること、これが極めて重要であると他の誰よりも強く信じております。
しかし、同時に、わたくしは、総理や各省庁の大臣が国会答弁のために費やす時間があまりにも長すぎるのではないか、とも思うのです。そして、国会答弁のために費やす時間とエネルギーが大きすぎるため、本来であれば大臣が行うべき政務活動、即ち、政治主導の政策立案や事務方に対するコントロールといった活動が、国民から期待されているほどにはきちんと行われていないように思われるのです。例えば、外務大臣の場合には、国会答弁があるが故に、重要な国際会議への出席やその時々の国際情勢にあわせたタイムリーな外国訪問を行えないといった事態も生じています。
わたくしのこうした主張が的外れなものではないことを示すために、他の主要先進国における外相と議会との関係をかいつまんでご説明したいと思います。例えば、議会制度の母国、英国と比較してみましょう。英外相の場合、年間百七十日程度の議会開催中(ちなみに日本の通常国会は百五十日です)、たったの四週間に一度(通常火曜日)、しかも僅か一時間しか、下院本会議での答弁を行いません(なお、その際には、三名の副大臣も同席し、質問によってはそれぞれの所掌分担に従って、外相に代わって答弁を行っています)。
また、この他に英外相及び閣外相が答弁に立つ可能性のある会合としては、外務委員会(特定の外交課題に関する調査を行う)と四省委員会(外務省、貿易産業省、国際開発省、国防省関連)がありますが、これらについても、昨年度(九九〜○○年会期)の場合、外相は九回、閣外相は六回しか答弁に立っていません。更に、答弁の態様については、事実関係に関する質問は文書で回答してもよいことになっている上、本会議での答弁についても、予定されていた質問者の質問のうち規定時間内に処理しきれなかったものについては、同日中に文書にて回答すればよいことになっています。
また、米国のケースは更に極端です。これは、米国においては、日本や英国とちがって議院内閣制度が採用されておらず、逆に三権分立が強く意識されているため、国務長官を含む行政府の高官が立法府である米議会の本会議において答弁等を行うことがそもそも制度上想定されていないからです。従って、行政府高官と議会との関係は、行政府高官が証人として出席する各種委員会に専ら限られており、国務長官(わが国の外務大臣に当たります)の場合、上院では外交委員会及び歳出委員会、下院では国際関係委員会及び歳出委員会においてのみ答弁を行っています。こうした委員会の開催頻度については、その時々の外交案件や委員長の采配により大きく異なるため、正確に数字を使ってご説明することはできませんが、その頻度はわが国の外務大臣が答弁に立つ頻度(即ちほぼ毎日!)とは比較にならないくらい少ないと言っても全く過言ではありません。
こうした傾向はフランス、ドイツ、イタリア、カナダといった他のG7諸国についても同じく当てはまります。更に、いずれの国においても、総理、大統領、外務大臣、その他の大臣といった政府高官の外国出張に際し、議会の承認が必要といった例も存在しません。言い換えれば、わが国においては、「国会重視」という名の下に、外務大臣の機動性が著しく損われているのではないかと思うのです。
ここではわたくしが外務大臣政務官として外務省の仕事に詳しくなったため、外務大臣を例として御説明しましたが、他のいずれの省庁についても同様のことが言えると思います。すなわち、国会答弁のためにあまりにも多くの時間とエネルギーを投じるため、大臣が本来行うべき行政活動がきちんと行われていないのではないかと推測するのです。
以上、繰り返しになりますが、国会は重要です。日本国憲法にもありますとおり、国会は主権の最高機関であります。しかし、「国会重視」という名の下に、総理や各省庁の大臣が国民の期待する政治的リーダーシップを発揮することが出来ないのであれば、わが国はいつまでも官僚任せの沈滞した国家であり続けると思うのです。これは国民にとって不幸なことだと思うのです。
そこでわたくしは提案したい。国会答弁の時間を現行の半分にせよ。しかし、時間を半分にした分、現在の二倍以上中身の濃い議論を行えるようにせよ。そのためには、例えば、事実関係に関する質問については書面による回答を可能とせよ。だらだらと的を射ない質問や答弁については議長や委員長が注意を行うような制度・慣習を確立せよ。わたくしはこうしたことを訴えたい。そして、中身の濃い議論、よりエキサイティングな議論を国会の場で行うことで、国民の国会に対する関心、より広くは政治そのものへの関心をより高めることが出来るのです。スキャンダラスだけで内容のない国会質問は、国民をますます国政から遠ざけることになります。
4 どこの国会議員の台所も火の車という政界の現実!
話はガラリと変わり、ここで、国会議員の台所事情について少しご説明しておきたいと思います。はっきり申しまして、どの国会議員の台所も火の車であります。政治とお金の問題を考えるうえでとても重要かつ重大なことなので、恥を忍んで申し上げておきたいと思います。
国会議員の歳費は税込みで年間約二千万円です。この他、文書交通費が一千万円、政党助成金が自民党から一千万円くらいと、他の諸寄付などを合わせて、年間ざっと五千万円くらいの収入が自民党の国会議員には入ります。「これだけあって、火の車とは何を言っているのだ」と怒られそうですが、活発に活動する国会議員でればあるほど、支出も大きいものとなり、実際にはどこの事務所も火の車というのが実情なのです。
例えば、人件費の問題があります。きちんと仕事をしたいと思ったら、国会事務所、地元事務所合わせて最低でも十名程度の秘書は確保したいというのが衆議院議員の本音だろうと思います。しかし一方で、現在国費で賄われるいわゆる公設秘書は政策担当秘書、第一秘書、第二秘書の三名だけ。したがって、どうしても足りない地元事務所秘書を中心に残りは、自分のやりくりの中で賄わなければならないのが実態です。まじめに仕事をしようと思えば思うほど、スタッフの少なさを実感させられます。
前に自民党で行った国会議員事務所の実態調査によれば、衆議院議員は平均して十五名程度の秘書を雇用しているというのですから、大半の事務所は秘書の人件費の捻出に大変苦労しているはずです。十名も人を雇えばどれくらいかかるかはお察しの通りです。
また、人件費の次に広報費も大変です。わたくしのところでは、毎月政策広報「絆」を出しておりますが、介護保険など大きな政策テーマが出た時は、当然号外というかたちで、何万部も印刷し、有権者に配布します。わたくしは、政策広報こそ二十一世紀の政治家にとって重要な仕事のひとつだと確信しておりますが、これだって何万部、何十万部と刷れば数百万円という膨大な金額がかかります。お金がかかるといって止めてしまうと、有権者は活動を認識してくれませんし、わたくしが次の選挙で支持を訴えることもできなくなります。選挙というシステムがある以上、継続的で細やかな広報費支出の発生は、不可避・不可欠なのものであるといえます。
この他、電話やファックス、コピー、文房具、ガソリン代等の諸経費が毎月毎月目が飛び出るくらいかかりますので、先ほどの収入だけではとても足りません。前述した自民党の調査によると、若手衆議院議員の事務所で年間にかかるコストは確か平均七千万円くらいだったと思います。そこで、差し引き数千万円という足りない分のお金を多くの議員がパーティー券販売というかたちで埋めているというのが実態です。政治資金規制法の強化により、政治献金が厳しくなってからは、パーティーによる収入がとても重要になりました。わたくしも御多分にもれず、毎年、「桜田義孝君を励ます会」というパーティーを開催させていただいております。
この項でわたくしが言いたかったことは、国会議員には歳費を含めても収入以上に、どうしてもお金がかかってしまうということ、そして、その埋め合わせのためには本当に血が滲むような苦労をせざるを得ないという現実です。ここに一部の政治家とお金の不透明な関係というのも時として生まれると思うのです。最近でもKSDの問題等が騒がれておりますが、政治家とお金の問題は、単に一部の国会議員をつるし上げて解決する問題ではありません。
要は、もっと構造的なものであり、政治にかかるコストというのをしっかりと算定した上で、国会議員の政治活動に必要な最低経費はしっかりと公的拠出がされてしかるべきだと思うのです。現職に有利になってしまうとか、公務員がリストラしているのになんだという意見もあると思いますが、公設秘書の数に象徴的に示されているように、むしろこれまでが異常であったと確信します。国会議員が満足に仕事をできる環境ではないのです。
そこで、事態解決のため、わたくしは公設秘書の数を倍増させることを提案したいと思います。当然、これは民主党議員による政策秘書給与搾取のような事件の再発防止措置を前提とするものでなければなりません。現在の国会議員事務所でかかる必要経費の半分以上はこの人件費に割かれていますから、この一定部分が賄われるだけで、かなり楽になるはずです。こうなると国会議員が血相変えて財政収入の問題を考えることが少なくなりますから、政治とお金の問題はかなり改善されると思うのです。政治資金規正法の下手な改正よりもずっと効果があるはずです。
5 国会議員の政策スタッフを充実させるべきである!
国会議員の政策立案能力強化のため、平成六年度から政策担当秘書制度というのが導入されましたが、現在の国で認められている政策秘書は一名だけです。一方で外交から財政から建設、文教まで国会議員の仕事は多岐に渡っており、政治主導で官僚をぐいぐいと引っ張っていくためには、政策秘書一人では十分な仕事ができるとはとても言い難い。
したがって、わたくしは、政策秘書を最低でも三名雇用できるように、法律の改正が必要であると思っています。先ほど述べたわたくしの公設秘書増員案においても、現在の一名に加え追加で二名程度は政策秘書として増員すべきであると思っています。三名というのは何も適当に言っているのではありません。内政全般、外交・安保関係、経済金融政策といった担当制にすれば良いと思います。これであれば国民に対する説得力も増すことでしょう。
また、政策秘書として採用されるためには試験に合格することが必要でありますが、実際には、毎年東大で行われている国家一種並みといわれる国家試験を受けた政策秘書が在籍している事務所の数は衆参全体の二割程度で、後の八割近くの事務所は、第一秘書等が面接試験だけをやって横滑りしているのが実態です。現在の政策秘書資格制度には、公設秘書を含む通算十年程度の秘書経験があれば、面接だけで政策秘書になれてしまうという、大きな欠陥が存在しています。ですから、優秀な人材は政治の世界にはなかなか入ってきにくい。
わたくしは今後、政策担当秘書制度については、むしろ試験で資格をもっている人材に広く門戸を開き、国会議員の政策スタッフを充実させていくことが必要であると考えています。ですから、現行の面接のみの公設秘書の横滑り試験制度を廃止し、全員に国家試験を義務化すれば良いと思います。
国会議員が一人である以上、行政と十分渡り合える国会議員の政策立案能力向上のためには、政策スタッフのバックアップが不可欠です。こうした政策スタッフが大勢整えられることが政治主導の前提条件であると信じます。
米国の例を挙げましょう。米国では、共和党、民主党の政権交代によって大量の政策スタッフが入れ替わります。官庁の局長以上は全部変わります。因みにクリントン政権からブッシュ政権への交代で約一万人の引っ越しが必要だそうであります。重要なことは、これだけの数の政策スタッフが何も湧いてでてくるわけではなく、絶えず政治的人材として、ワシントンDCの近くにプールされているということなのであります。
彼らは政権に入る前は大学やシンクタンクの研究員、国会議員の政策スタッフとして論文を発表するなど機をうかがい、政権交代とともに今度は政府内で行政幹部として活動する。こうした政治上の人材の流動性を表して「回転ドア」というそうであります。彼らは政権に入る前から官職に就いたら何をやるかを日夜必死になって考え、任期中においては必死になって良い政策を実現しようとしますから、結果として政策形成過程に大変好ましい緊張感と効果が生まれます。国家公務員試験によって定年まで雇用が保証されているわが国の高級官僚制度とは大分事情が異なっているのです。
わたくしは、政治主導国家の実現のためには、国会議員とともに活動し、行政をコントロールできるこのような政策スタッフの充実が不可欠であると思います。政治という分野にドンドン優秀な人材を呼び込む必要があります。今後、政策担当秘書の増員を足かがりとして、引き続き国会議員の政策スタッフを充実させるための具体的な制度を詰めていきたいと思っています。
6 会議すらできない議員会館は何とかすべきである!
皆さんは国会議事堂裏にある議員会館にいらしたことがありますか。通常議員が執務をする議員会館は、議事堂の裏に、首相官邸の方角から自民党本部の方向に向かって、衆院第一議員会館、第二議員会館、参議院会館と三つ仲良く並んでいます。そして、何より地元から来る支援者がまず驚くのはその狭さであります。広さにして十七坪、それを議員室と秘書の事務室に半分ずつ分けています。とても狭くて息苦しいほどであります。
議員会館が狭いことで、わたくしが一番問題であると思うのは行政部局担当者を呼んでの会議ができない点であります。議員室は議員机と椅子の他、その横に四〜五人程度が座れる応接セットがあるくらいですから、まともな会議はできません。机も応接セットの小さな机ですから、その上で政策資料に書き込むこともままならない。
細かいことのようですが、国会議員の大きな仕事が会館での委員会質問等を練る会議であることを考えれば、これはゆゆしきことであるといわざるを得ません。国会議員が余計な仕事をできないように意図的にこのような構造にしてあるのではないかと意地悪な推測をしたくもなります。
会議を開催できないだけではありません。書類を置く棚も十分ではない。先ほど部会の話をしました。毎日毎日、国会に届く政策関係資料の数・量は膨大なものであります。少ない時でも一日で百科事典二冊分くらいには積みあがると思います。これだけの量の書類を管理するのは大変であります。資料を整理しておく書棚も充実させてもらわないと、とてもやっておられません。
また、IT時代なんのといって、デスクトップパソコン一台すら置けません。ですから、議員会館用端末はどれもノートブックであります。プリンターもあまり幅を取る高性能なものは置けません。秘書事務室側にある来客が待つスペースも、二人が入るのがやっとで、とにかく狭いというのが現実なのです。
議員会館が狭い、狭いと言っていると、「贅沢言うな」というメールを送られそうです。国民の目からみて、わたくしの言うようなことはなかなか理解されにくい。しかし、いい加減な仕事をしないためには、必要最低限の環境整備も必要です。以上のようなわたくしの話が嘘だと思う人は、是非一度第一議員会館三三八号室のわが事務所を訪れてみて下さい。
7 衆議院小選挙区制度の是非について ――国会議員は小粒になったか?
よく中選挙区制度から小選挙区制度になって国会議員が小粒になったという言われ方をされます。大物議員がこうした発言するのがメディア等で取り上げられたりします。果たしてこれは事実なのでしょうか。わたくしは先般の選挙において努力不足から苦杯をなめましたが、小選挙区で誕生し、引き続き小選挙区で戦っている国会議員として、聞き捨てならないので、ここではっきりとさせておきたいと思います。
そもそも中選挙区制度は、現在の小選挙区を三つくらい足した大きな選挙区の中から三から五名程度を選ぶ方式であるため、@同じ党で複数の候補を立てることになり、政党間の政策論争に持ち込みにくいA同一政党が複数の候補を立てるため、自民党の派閥対立を助長したB選挙区が大き過ぎて地方議員頼みになりがちでお金がかかる――など、多くの問題点が指摘され、わたくしが初当選した平成八年の第四十一回総選挙から小選挙区と一部比例代表を組み合わせた小選挙区比例代表並立制が導入されました。
正直申し上げまして、中選挙区はえらく大変だったろうなあと思います。とにかく広過ぎる。現在のわたくしの千葉八区も、当時は千葉四区と称し、浦安市や市川市、松戸市と東葛飾地域すべてを含むものでした。今の柏市、我孫子市、沼南町でも四苦八苦なのに、どうやって選挙を戦ったのか本当に驚きです。旧社会党系や共産党と違って、自由民主党の場合は後援会中心の選挙にならざるを得ませんから、選挙活動地盤の維持には特段のコストがかかったことと思います。
また、例えば自由民主党だけで同一選挙区内に二人も三人も候補者を立てるとしますと、先ほど申し上げたとおり、政策では争点が明確にはなりません。むしろ政治家個人として、どちらがマメに地元の会合に顔を出しているとか、どちらの事務所が活発に地元の面倒をみているとか、そうしたことを争う選挙になってきてしまいます。結局、細かな対応のため、中選挙区内全部に事務所をおくということになると人件費だけで膨大になります。こうした中、かつては衆議院議員一人あたりの秘書の数が三十人程度はざらであったという話もあるくらいです。
したがって、わたくしが申し上げたいことは、中選挙区制度を前提とする以上、どうしても、かなりのお金がかかるということです。政治資金規正法を次第に厳しくする方向の中で、中選挙区制度に戻すことは現実的ではないと思います。
一部の議員の中には、いろいろな事情から中選挙区制復活を唱える方もいるようですが、わたくしは大反対であります。朝令暮改もいいところで、一度採用したけれど単に自民党に不利だから止めようというのでは国民の理解を得られません。お金のかかる選挙制度を採用することは、有能な人材をますます政治から遠ざけてしまうことをも意味しており、大変問題であると考えています。
さて、そうしたことを前提として、小選挙区で選出される国会議員は中選挙区で選出される国会議員に比べて小粒になったといえるのか。わたくしは断じてないと思います。むしろ国会議員が国民に身近な存在になった、選挙に比較的お金がかからなくなったというメリットの方が大きい。
仮に国民からみて政治家が小粒になったとしたら、それは何も小選挙区が原因でなくて、明治時代や戦争を体験していない若い議員が増えたことなどによると思います。やはり国が豊かになってしまった分、苦労していない分、小粒になってしまったとみられる点は、どうしようもない事実であると思います。わが国だけでなく、米国でも同様の現象を指摘されることがあるというのを聞いたことがあります。
わたくしとしては、自らを絶えず厳しい位置に置いていくことによって、明治の元勲や戦後の大政治家に負けないような、国の「かたち」と「こころ」づくりを担える真のリーダーを目指して、研鑚を図って参りたいと思います。
8 国会議員の仕事ぶりは何ではかればよいのか?
国会議員がきちんと仕事をしているかどうか、これを見定めるには国民はどうしたら良いでしょうか。この問題はいわば民主主義の根幹を形成するものであり、この章の最後のこの項において明確にご説明しておきたいと思います。
よく国会議員の、特に野党の国会議員の広報に、「自分は本会議で党を代表して演説をした」「委員会で何十回質問した」「議員立法をやった」等々が、さも自慢気に書かれているのをご覧になった方もいらっしゃると思います。確かに本会議演説や委員会質問は国会議員の重要な活動であり、国民にとって比較的イメージしやすいものですが、これだけで国会議員の活動ぶりをはかることはできません。
第一に、委員会質問は、審議を円滑にするためどちらかといえば、野党に優先的に割り振られることが多く、また、少数政党であればあるほど出番は多くなります。ですから、質問回数だけを自慢する議員の広報は当てにならないと踏んでおいた方が良いでしょう。むしろ内容がどの程度しっかりとしているのか、その後のフォローをしているか、そうしたことをきちんとチェックされた方が良いと思います。
また、議員立法だって、ろくに通る見込みのない、いい加減なものであればいくらでもできます。民主党主導で進んだ金融再生法が、巨額の税金を投入するはめになってしまった欠陥の多く評判の悪いものだという事実は知っておかなければなりません。国の行政専門知識がますます煩雑になっている中では、先ほど述べた党の部会や個別のヒアリング等を通じて、日常的に行政側の幹部と渡り合って政策形成の主流をリードし、運用例等細かいところの企画立案は役人にまかせるという関わり方も必要です。一部の人間が言う、議員立法イコール善などというのは誠にナンセンスです。政策を実現したければ与党になるしかありません。
どこかの政党のように反対、反対では実際の政策・制度は何も変わりません。野党の自己満足に過ぎません。反対するのは簡単です。わたくしだって野党の立場になればいかようにもケチを付けることができます。特に最近の自民党には文句を言いやすい。しかし、問題はケチをつけるだけでなく、自分達ならこうするという具体的なビジョンが必要です。野党はこの点、実に浅い。だから、国民はこれを見抜いて、民主党を始めとする野党支持率は、選挙が終わるとまた態度保留に逆戻りしてしまうのです。
この前も日曜朝のテレビ番組で政治評論家の田原総一郎氏に、「それでは、あなたが唱える経済構造改革とは一体何を指しているのか」と質問された民主党の菅直人幹事長が、「それは・・・」と受験生が答えそうな通り一遍のことを言っただけで、口ごもってしまう場面が映し出されていました。実際、文句を言うことと、代わりにやってみることは、天と地ほどの違いがあるのです。あなたの身の回りにも大勢いますよね。いつも無責任に文句ばかり言って実際には口だけで何もしない人が・・・。
繰り返しになりますが、わが国の議院内閣制を前提に考えた場合、国会議員の仕事、取り分け与党議員の場合、政策形成上、行政機関をどうリードしていけるかが、議員の資質を図る試金石だといっても過言ではありません。これが政治主導の政策形成という思想なのです。次に国会議員にとって理想となるこの政治主導の政策形成を実現していく上で、直面せざるを得ない日本の官僚機構というものに焦点を当てて、考えてみたいと思います。
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